「日本一難しい」盆踊り、京都にあった! 光秀ゆかり400年の伝統、認知症予防の効果も


京都新聞

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夏の風物詩として全国各地に伝わる盆踊り。京都府福知山市には戦国武将・明智光秀ゆかりの福知山踊りがある。400年以上の伝統があり、「ドッコイセ」の掛け声とともに今も多くの市民に親しまれている。全国の盆踊りの中でも所作が複雑で、近年は認知症予防にも効果があるとも言われ、調査が進む。踊りのルーツや魅力に迫った。

 福知山出て長田野越えて 駒を早めて亀山へ

 三味線や尺八の軽やかな音色に合わせ、踊り手がゆったりと動く。「ドッコイセ ドッコイセ」と合いの手が入り、リズム良く踊りが進む。歌詞は現在、70種類以上もある。光秀をたたえたり、福知山藩を治めた朽木氏の藩政に触れたりした内容が多い。

 踊りは、光秀が福知山城を築いた際に、領民たちが「ドッコイセ」の掛け声で石や材木を運んだことが由来と伝わる。普及活動をする福知山踊振興会の田村卓巳会長(66)によると、最も古い記述として、1748(延享5)年発刊で、主に豊岡周辺の歌を集めた小歌集に福知山踊りの歌詞に似た歌が載っているという。踊りの形は、幕末に福知山の素封家が能や狂言の所作を取り入れ、今の基礎を整えた。

 毎年お盆の時期には「福知山ドッコイセまつり」が市内で開かれる。今年はコロナ禍の影響で中止となったが、例年は市中心部に櫓(やぐら)が組まれ、多くの市民らが踊りを楽しむ。人出は昭和30年代ごろがピークだったという。同市昭和新町の山内雅子さん(81)は「踊りは小さい頃から見て自然に覚えた。昔は観覧客も含めて誰がどこにいるか分からないぐらい人がいて、遅くまで踊っていた。屋台もいっぱい並んでいた」と振り返る。

 最近は娯楽の多様化などで踊る人は少なくなっているという。福知山踊振興会の会員らは踊り手と地方に分かれて研さんを積み、次世代へ踊りを伝えていこうと市内の保育園や小学校、企業などに出向いて教えている。

 田村会長は「今年はNHK大河ドラマの主人公が光秀で福知山が注目される年なのに、新型コロナウイルスの影響で踊りを披露する場が少なく、残念」とする一方、「福知山は多くの水害や災害に見舞われてきたが、そのたびに住民が力を合わせて乗り越えてきた。それこそがドッコイセスピリット。踊りとともに、その精神や地域の歴史も継承していきたい」との思いを新たにしている。

■複雑な16の手ぶり、脳の活性化に「効果」

 福知山踊りは16もある手ぶりが特徴で「日本一難しい盆踊り」とも評される。全国の盆踊りを調査し、難易度をつけた本を出版した日本フォークダンス連盟(東京都)は「16の手ぶりがある盆踊りは他にもあるが、ゆったりとした優雅な動きだからごまかしが通用しない。床をすって持ち上げるような足の運びやバランスが難しい」とする。本の中で福知山踊りには最も難しい難易度3をつけた。

 1954年の全国都道府県対抗民謡舞踊大会では2位に入賞。66年には福知山市の無形民俗文化財に指定された。93年にはドイツで日本文化を紹介するイベントで、今年1月には「ふるさと祭り東京」でそれぞれ披露するなど国内外に魅力を発信してきた。

 地元では難易度の高さと認知症予防の関係に注目している。京都府中丹西保健所などのプロジェクトチームが2006年に行った研究では、脳が活性化し、認知症予防に一定の効果があると確認された。

 その後、福知山市民病院が16年10月から1年間、同市大江町の70歳以上の住民を対象に検証した結果、認知機能検査の点数に改善が見られた。同病院は18年、市全域に対象を広げたが、参加者が途中で抜けるなど母数が少なくなりデータとしては使えなくなったため、「方法に改良を加えて再度検証したい」という。

 効果が確かめられれば、市は伝統文化を生かした健康法として、高齢者の介護予防に生かすことも検討する。


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