自転車による子育て支援で全国表彰 尼崎市・ふたごじてんしゃの中原美智子さん


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子ども2人を後部座席に乗せられる三輪自転車の開発・販売に取り組む株式会社ふたごじてんしゃ(尼崎市)。国の自転車活用推進本部(本部長:国土交通相)から、兵庫県では初めて功績者として表彰された。商品の特徴や開発に至る経緯を、代表取締役の中原美智子さんに聞いた。

――「ふたごじてんしゃ」の特徴を詳しく教えてください。

 後ろが2輪になっている三輪自転車で、日本初の6歳以下の子どもたち2人を同時に乗せられる自転車です。ママの後ろに子どもが2人縦にならんで座るようすは、「カルガモの親子」をイメージしてください。普通自転車の企画内ですので、一般的な26インチの自転車と全長は同じです。

――何歳まで乗せられるのですか?

 そもそも、自転車の前に乗せられる子どものは4歳未満、という製品規格があります。後ろには、兵庫県ではちょうど変わって、6歳までの子どもを乗せられるようになりました。つまり、ふたごじてんしゃなら小学校にあがるまでのお子さんを2人同時に乗せることができます。実は、6歳の誕生日を迎えると保育園や幼稚園の送迎時に自転車に乗せられない、という都道府県がまだまだあって、兵庫県もそうでした。オンラインで署名を集めるなど、いろいろな活動をしてきました。

――とても画期的で、便利だとおもいます。

 前カゴがありますし、停車中に安定するので信号待ちでフラフラしませんし、安心して手押しができます。ただし、スピードを出すのは苦手です。後ろの2輪のどちらかが浮けば転倒するリスクがあります。見た目は3輪でとても安定していますが、絶対に転ばないわけではないので、そこは理解していただきたいですね。

――いつ、どのような経緯で開発したのですか?

 長男が幼い頃、自転車であちこちに遊びに出かけたのがとても楽しかったんです。そのあと、双子を出産してからも同じように自転車でおでかけがしたいと思ったのですが……2回転倒してしまって、双子の子育ての大変さと相まってひきこもり気味になってしまいました。

――母子ともに、転倒の恐怖は計り知れませんね。

 徒歩よりちょっとでも楽をしたいという気持ちで、子どもに怖い思いをさせてしまったことが申し訳なくなったんです。でも、それでもおでかけがしたい。そこで「もう二度とこけない自転車に乗るんだ!」と決めました。それが2011年の夏頃だったと思います。それから、ふたごが乗れる自転車の開発に進んでいきました。

――自分で作ろう、という考えに至るのがすごいです。

 最初は、近所の自転車屋さんに行って、「双子を同時に乗せられる自転車が欲しいんです!」と相談したんですが、「ないよ」と言われてしまって。あちこちに相談しましたが、「難しい」と断られ続けました。「じゃあ作ろう!」と(笑)。自分でやろう、と決めました。

――ふたごじてんしゃでは「アセスメント販売」という手法をとっていますが、どのような仕組みで、狙いはなんですか?

「ふたごじてんしゃ」と聞くと、双子を育てている皆さんがとても関心を持ってくれるんです。しかし、これまで説明したように特殊な車両なので、すべてのご家庭に万能ではありません。せっかく買ったのに、自分の思うような使い方ができなければもったいない。ですから購入前に、「なぜ、ふたごじてんしゃが必要なのか?」「どんな暮らしがしたいのか?」と立ち返り、自分にとってこの自転車が本当に必要なのか考えてもらうようにしています。

――ユーザーに寄り添った、とても大切なことですね。

 本当に使える人に使ってもらえること。少しであっても喜んで必要としてくれる人たちがいてくれるということで、作り手が喜びをもって作り続けることができるんです。使い手と作り手の両者がお互いを必要とすることが、何よりも大切だと思っています。

――ユーザーからはどのような声が届いていますか?

 一番多いのは、「これまでなんて不便な生活をしていたんだ」「生活が激変した」というお声です。公園へ行けた、病院へ行けた……。当たり前に感じるかもしれませんが、この当たり前ができなかった人にとって、喜びはひとしおだと思います。

――兵庫県では初めて、国の自転車活用推進本部から功績者として表彰されました。

 自転車の利活用や少子化対策に可能性を示したことが評価されました。赤羽一嘉国土交通相から「30年前くらいに開発されていれば、私の妻も大変喜んだのではないかというふうに思っております」と言っていただけたのはうれしかったですね。生活者自身が、自分で行きたい場所を決め、自分のあしでその場所へ行ける。自立できる社会を目指したいです。

――今後の目標はなんですか?

 これまでは自転車=2輪というイメージが強かったと思います。でもこれは、規格に則って健康な大人が乗る、という前提があってこそです。多様なニーズをもっている人たちが、自分の意志と力で自由におでかけが叶うよう、まずは自転車というツールで挑戦していきます。


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