浸水の保育園、廃校を間借り 園児の歓声戻る


西日本新聞

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 九州各地を襲った7月の記録的豪雨から1カ月。広い範囲で床上浸水の被害が出た福岡県大牟田市では、施設が被災した不知火保育園(同市南船津町)が、近くの閉校した駛馬(はやめ)南小のランチルームを間借りして再スタートを切った。職員たちは不慣れな環境の下、園児106人(0~6歳)の保育に奮闘。杉村美智子園長は「不運を嘆いても仕方ない。子どもたちや保護者のため、一丸で頑張りたい」と話している。

 板張りのワンフロアの新しい「園舎」は、広さ約230平方メートル。子どもたちの明るい声が響く。年齢が近い四つのグループが四隅に分かれ、読み聞かせや紙芝居などを楽しむ。乳幼児のコーナーには柔らかい運動用マットが敷かれ、市から提供された避難所用の段ボール製間仕切りで空間を確保した。隣接する調理場跡が職員の事務所代わりだ。

 職員たちは新しい環境で、新型コロナウイルス感染症や熱中症などに注意を払い、「工夫しながら子どもたちが過ごしやすい環境を模索している」(杉村園長)という。

 福岡、佐賀、長崎の各県では、7月6日午後に大雨特別警報が出された。福岡県では、筑後地区を中心に6~8日に被害が拡大。大牟田市では2人が犠牲になった。不知火保育園は床上約50センチまで浸水。水が引いても、床板が反り返るなどして休園に追い込まれた。

 そこに届いたのが「子どもの面倒を見ながらでは働けない」と困惑する保護者の声。杉村園長らが市などに掛け合い、駛馬南小のランチルームを無償使用できることになった。ただ、廃校から2年以上経過しており、保護者や職員が2日がかりで床や窓の拭き掃除をして、カーテンも洗濯。7月16日に“仮住まい”での開園にこぎ着けた。

 職員の中には自宅が床上浸水した人や、自家用車が被災して代車で通勤する人もいる。職員の一人(59)は「子どもたちも頑張っている。少しでも力になりたい」。杉村園長は「保護者からの『預かってもらうだけでありがたい』という言葉に勇気をもらっている。踏ん張りたい」と力を込める。 (立山和久)


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