ドイツ「子どもが泥んこになる権利」が法律で保証されてる理由


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木登りや料理など、子どもが危険なことしているとすぐに止めてしまう、もしくは、そもそも禁止しているという保護者の方は少なくありません。もちろん、危険がないよう監督することは保護者の責務といえますが、書籍 『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』(幻冬舎MC) の著者で、東京富士大学経営学部教授の鬼木一直氏は、「親にとって危険に思える行為でも、全面的に禁止すべきではない」と述べています。一体なぜなのでしょうか。

多様性を育てたいのなら、多くのことに挑戦させるべき
皆さんは、いつお子さんを褒めていますか? 成功した時、良い点数を取った時など、結果が伴った時に褒めると思います。例えば100点を取ってきた子どもがいたら、当然褒めますよね。しかし、子どもからすると、次、95点だったらどうなんだろう? 100点しか褒められないのでは? と心配になるケースがあるといいます。

逆に、頑張ったけれどうまくいかなかった時はどうでしょう? 難しいことにチャレンジして失敗するなら、簡単なものを狙いにいくのは、褒められたい心理としては自然なことです。保育園や幼稚園ではできることは限られてきますが、日常生活の中では、チャレンジし得る多くの選択肢が存在します。

簡単な洋服畳みをして、できれば褒められますが、難しい洗濯物干しを手伝って、汚したら怒られるのでは簡単な方に靡(なび)くのは当然です。

大人になると、結果が求められることが増えるので、つい子どもにも結果を要求しがちですが、大切なのはプロセスです。できないことにいかにチャレンジするか、多くのことにトライするかが“多様性”を育てるためには必要なことです。

子どもが100点を取ってきた時には、結果ではなく、「頑張っていたよね。努力が実を結んだね。」という褒め方が大事なのです。そして、チャレンジして失敗した時がさらに重要です。“失敗は成功の母”なのですから、失敗するほど難しいことに挑戦した事実を絶賛するべきです。成功するより、失敗した方が先に繋がると教えることが実行力を養います。

【ここがポイント】

出世はしたくない、苦労はしたくないという社会人が増えています。無難という選択も悪くないと思いますが、1度きりの人生、失敗を恐れずに多くのことにチャレンジしてもらいたいと思います。

子どもたちを危険から守ることは、もちろんとても大切なことです。それは、親はもちろん、子どもを取り囲む周りの人たちの責務ともいえます。しかし、それが過保護になってしまっては、子どもたちの危険に対する判断力が養われず、本当に危険なものとの区別をつけることができません。

木登り、塀の上を歩くなどの遊びを、危ないからだめと言っていたらいつまで経ってもできるようにならず、いざ、挑戦した時にはどうすればいいのかわからなくなり、大けがをするケースがあります。

包丁やのこぎりを使ったり、料理をするなどの行為も同様です。5歳にもなれば、かなりのことができます。何事も触ってみなければ、ノウハウが身に付きません。大きくなり、知識だけで始めた時こそが、一番危険な状態なのです。

ドイツの子どもには、「木に登る権利」、「泥んこになる権利」が法律で保証されています。幼稚園教育要領においても、「周囲のさまざまな環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う」ことを目的の1つにしており、幼少期における自然と関わる意味合いは深く、自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、子どもは心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力などの基礎が培われます。

近くに大きな公園がないなど、環境が整いにくいとは思いますが、是非、子どもを自然と触れ合える場所に連れて行って、楽しんでみてはいかがでしょうか。

【ここがポイント】
子どもたちを危険から守るのは大切なことです。しかし、過保護はむしろ危険に対する判断力を奪うことになりかねません。木登りや料理などは、見ているときに少しずつやらせてあげましょう。

※本記事は連載 『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』 を再構成したものです。

鬼木 一直

東京富士大学

入試広報部入試部長、IR推進室長/教授


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