「木のおもちゃ」に託す未来 ”森と人をつなぐ”「木育」とは


テレビ新広島


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今回は、ある木のおもちゃに注目しました。県内で作られているこのおもちゃには林業の未来、そして、今話題のSDGsへの想いが託されていました。

【ドミノが倒れる様子】
ドミノに、リアルなお店屋さんセット。2000個の木でできたプール。

子どもたちが夢中になって遊ぶ木のおもちゃ。このおもちゃが作られているのは創業54年、三次市の小さな木工所です。

社長と従業員併せて3人。みんなお母さんです。使うのは、中国山地などの地域の木材。塗料も国産で食品衛生法をクリアしたものしか使いません。こうしてできた商品は、本物そっくり。

【石井記者】
「卵焼きのリアル感とかすごいですよね」
【一場木工所・寺河美帆社長】
「色見もありますし、うちの社員も弁当に入っていないものは入れたくないみたいなところがあったり、焼き印も私が書いて、ちょっと最後が開いているみたいなのも敢えて作っています」
【石井記者】
「卵焼きを焼いていらっしゃるお母さんならではの視点ですよね」

そして、もう一つのこだわり。それは…、木の魅力を伝えること。スギやヒノキ、ケヤキにイチョウ。あえて様々な木を使っています。

【寺河社長】
「こっちがちょっと冷たくて、こっちがたぶん温かく感じると思います」
【石井記者】
「全然違いますね。重いし冷たい、こちらが軽くて暖かい。あとやっぱり近くにいるとマスクごしでもヒノキの香りがしてきますね」

さらに…。(ドミノ倒しの音)この音!

【一場木工所・寺河美帆社長】
「木って山に生えていて持続可能なSDGsの考え方に乗っ取った素材なので、そういうものを使いたいなと思ってくれるようなきっかけになるのが木育だと思っているので、そこを含めて取り組んでいます」

「木育」とは木材や森林に触れ、価値を正しく知り、それを活かすことのできる人を育てる教育活動。一場木工所のおもちゃ作りの根底には「木育」があります。

おもちゃ作りを始めた寺河さんは2代目です。大手食品メーカーで品質衛生を担当していましたが母の闘病をきっかけに三次に帰り9年前、父の後を継ぎました。林業のことは分かりませんでしたが、木は大好きでした。

【一場木工所・寺河美帆社長】
「小さい頃から工場で遊んでまして、触ったときの柔らかさあたたかさみたいなのが一番の魅力ですね」

工業系では最難関と言われる国家資格を取得するなど、学ぶうちに木材資源を取り巻く現状を知ります。

世界有数の森林国、日本。地球温暖化や災害の防止生物の保全にもつながる森林ですが今、多くの課題を抱えます。木は、植林後、成長と共に適切な時期に枝の一部分を切ったり残る木を活かすために一部の木を伐採するなど適切な管理をしてはじめて、すくすくと育ちます。

しかし、現状は林業の担い手不足などで、適切な管理や運営ができているとは言えません。

そこで寺河さんは、森林に関わる人に適切にお金を落とそうと、木材加工の下請けだった家業を方針転換し、地元木材でのおもちゃを作りをスタートさせたのです。

【一場木工所・寺河美帆社長】
「そこまで考えた商品でなければ。今後世の中には打ち出していけないということで、意識はSDGsに添ったような形の商品になっています」

日本のおもちゃで初めて生産から使用、リサイクルにかかる二酸化炭素の排出量・環境への負荷を算出し、見える化。環境に配慮した商品にこだわります。

さらに、おもちゃのサブスクリプションも導入。一定期間貸し出しをし、1年ごとにメンテナンスする仕組みを取り入れました。これは「道の駅」や「保育園」などで活用されています。

【一場木工所・寺河美帆社長】
「木のおもちゃは、長く孫にとかにっていう形で受け通がれていくものだと思っています。メンテナンスすればたぶん100年でもずっと持ちます」

さらに、今、「木育普及委員会」を立ち上げイベントなどで一般の人に、木の魅力を知ってもらうために活動しています。

【一場木工所・寺河未帆社長】
「自分たちの周りに身近な木を使いたいという意識の人たちが増えてくるようにすれば、そういう木も増えてくる」

少しでも木に触れてほしい寺河さんは、森と人をつなぐのが自分の役目だと思っています。

【参加者】
「すごく軽くて安全でいい匂いでいいなと思いました」「草のにおい」「好き」「すごく楽しそうに遊んでいるずっと集中して遊んでいてきょうはなるほどと思うことが多かったです」

【一場木工所・寺河美帆社長】
「プラスチックだったのをちょっと木に変えてみようかなっていう、少しずつ小さな一歩をみんな少しずつしていくのがSDGsっていう考え方なんじゃないかなと思っていますね」

その一歩を踏み出せるように。手作りの木のおもちゃに地域の未来を託します。


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