専門家がアドバイス!何をするにもダラダラ…に決別!子どもに「集中力」をつけさせる方法


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教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
集中力がなくて困っています。宿題をやるのにだらだら時間がかかり、やったとしても内容が身につきません。習字とそろばんを習わせているのですが、これも集中できません。何度叱っても改善されません。集中力をつけるにはどうしたらいいでしょうか?

ゆばば さん(小4男子)

【親野先生のアドバイス】
拝読しました。
子どもに集中力をつけるためにまず絶対に必要なのは、「あなたは集中力がない。もっと集中しなきゃダメでしょ」と叱るのをやめることです。

なぜなら、親がこういう叱り方をしていると、子どもは「自分は集中力がないんだ」と思い込むようになってしまうからです。
そういう思い込みをしてしまうと、実際にだんだんそうなっていきます。

人生は思い込みで決まります。
「自分はこういう人間だ」という自分への思い込みは、人間が自分を作っていくときの設計図になるからです。

人間は自分自身をつくっていく唯一の生き物です。
ただ闇雲に自分自身をつくっていくのではありません。
自分に対する思い込み、つまり自己イメージが設計図になり、それを目指してつくっていくことになるのです。

自分はダメだと思い込めばダメになりますし、できると思い込めばできるようになります。
ですから、「集中力がある」と思い込めるようにしてあげることが大切なのです。

そのためには、まず「集中力がない」といって叱るのをやめなければなりません。
同時に、子どもが「集中力がある」と思い込めるような言葉を掛ける必要があります。

そこで一つ提案ですが、もう一度子どもをじっくり観察してみてください。
宿題、習字、そろばんなどに対する集中力がなくても、ほかのことにおいてはどうでしょうか?
好きなことなら時間を忘れて集中するのではないでしょうか?

例えば、ブロック遊びは飽きずにずっとやり続ける、イラストなら何時間でも描いているなど、どこかで集中する姿を見せているのではないでしょうか?

本当に好きなことや、やりたいことなら、子どもは「やめなさい」と言われてもやり続けます。
つまり、集中力が発揮できるかできないかは、やっている物事との相性によって決まることが多いのです。
ツボにはまれば、どの子もものすごい「集中力」と「やる気」を発揮します。

ですから、子どもが楽しく集中できることをたくさんやらせてあげてください。
実際に集中できる体験をすることが大事です。
そして、その集中しているときに「集中力があるね」と言ってあげてください。
そういう言葉をたくさん聞いていると、子どもは「自分は集中力があるんだ」と思えるようになります。
これがとても大切なことです。

すると、好きなことでないことをやっているときも「集中力があるんだから、がんばれるはずだ」という気持ちが出てきます。
もちろん、すぐに大きく変わることはないかもしれません。
でも、長い目で見てそれを続けていれば、だんだんそうなっていきます。


もう一つ大事な点は、このように子どもが楽しく集中できる時間を増やして「集中力があるね」とほめていると、親が子どもに対して「この子は集中力があるんだ」と思い込めるようになるということです。
これがなぜ大事かというと、心理学でいうところのピグマリオン効果が働くからです。
これはアメリカの心理学者ローゼンタールの次のような実験で得られたものです。

まず、ローゼンタールは子どもたちに知能テストをおこないました。
次に、学級担任の先生にこれから学力が伸びる可能性のある子の名前を教えました。
しかし、それらの子どもは知能テストの結果とは関係なく無作為に選んだものでした。
そのことは先生には告げられませんでした。

1年後に、伸びる子として名前を挙げられた子どもたちは、他の子どもたちに比べて明らかに学力の向上が見られました。
つまり、「この子は伸びる」と先生に思い込まれた子は実際に伸びた、というのがこの実験の結論なのです。

それはそうですよね。
「伸びる」と思えばその子の肯定的な面をより多く見るようになりますし、掛ける言葉も肯定的になるでしょう。
当然、子どももそれを感じ取り、自分に自信を持てるようになります。
また、肯定的に見てくれる先生への信頼感も高まり、さらにそれに応えようと努力するでしょう。

このことは親子の関係でも同じです。
ですから、子ども本人と親の両方が肯定的な思い込みができるようにことが大事なのです。

さて、集中力については本連載の下記の記事でも書いていますので、ご参考にしてください。

遊びには集中しますが、勉強にはさっぱり集中できません
https://www.benesse.jp/kyouiku/200603/20060308-1.html

集中力をつけてていねいに物事を扱えるようになってほしい
https://www.benesse.jp/kyouiku/200603/20060315-1.html

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール
親野智可等
教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

※この記事は「ベネッセ教育情報サイト」で過去に公開されたものです。


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