障害がある子の親も、仕事をあきらめなくていい日本に! 1/19(火) 20:42配信


サンキュ!


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世界が抱えるさまざまな課題を地球に暮らす私たち皆で解決し、サステナブル(持続可能)な社会をつくろう。「SDGs(エスディージーズ)」とは、地球の明るい未来をつくるための約束。SDGsを考えるきっかけになる、今月のアクション「働きがいも経済成長も」をご紹介します。

◎What's SDGs◎
国連が定めた、地球の明るい未来のための17の目標。
「貧困をなくそう」「不平等をなくそう」「地球温暖化など気候変動への具体的な対策をしよう」など、これからの世界が解決すべき17の目標。2030年までの達成をめざしています。

「障害児のための保育園」ヘレンの1日
気管切開や呼吸器を使う「医療的ケア児」や、重い障害がある子の預け先はきわめて少数。そんな子を育てるママは、仕事をしたくてもできない……このような日本の状況を変えようと2014年に誕生した「障害児保育園ヘレン」は、日本で初めての障害児向け保育園。今月は、東京都練馬区にある「ヘレン中村橋」の1日を取材しました。

重い障害があったり、医療的ケアが必要な子は、待機児童にカウントすらされない現実
働きたくても預け先がない現実から、すべての子どもが保育を受けられ、保護者が働くことを選べる社会をめざして。障害児保育園ヘレンは、看護師や作業療法士、研修を受けた保育スタッフのチームが、医療的ケアと療育を組み合わせた保育を朝8時から夕方6時半までの長時間実施。障害がある子の親でも仕事ができるよう後押ししています。
医療の進歩により助けられなかった命を救えるようになり、医療的ケアを受ける子や、重い障害がある子はここ10年で急増。しかし、ヘレンのような障害児向けの保育園は、きわめて少ないのが現状です。

医療的ケアを受けている子は、10年で約2.3倍に

NICUなどに長期入院したあと、退院後も引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な「医療的ケア児」は年々増加。歩ける子から寝たきりの子まで状況はさまざま。

平成30年度厚生労働科学研究費補助金障害者政策総合研究事業
「医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究」

障害のある子のママの常勤雇用率は5%

常勤雇用率が低い背景の1つに、「働きたくても預け先がない」ことが考えられる。医療的ケアが必要な子を受け入れている保育園や幼稚園は、全国的にはごく少数。発達支援センターでも預かり時間は日中の数時間で、親の同伴が必須なケースも多い。

「全国家庭児童調査」厚生労働省(平成21年)、「障害者(児)・家族の暮らしと介護者の健康調査」障害者(児)の家族の健康 生活調査大阪実行委員会(平成8年)

保育園ヘレンとは?医療的ケアもおこなう保育園
病児や障害児の保育、子どもの虐待や貧困などに取り組む認定NPO法人フローレンスが運営。現在は東京に5園(荻窪・経堂・東雲・初台・中村橋)。利用料は認可保育所と同じく取得に応じた保育料と障害者福祉サービスの上限負担月額を合わせた金額。

親は仕事ができる。子どもが集団生活で成長する。こんな保育園が日本中に生まれてほしいです

樋山千恵さん[写真左](36歳 東京都)
37歳の夫(右)、3歳の長男一太郎くん(中央)、義理の母、義理の叔母の5人家族。一太郎くんは先天性多発性関節拘縮症(AMC)などの病気があり、両足に装具をつけ、夜間は酸素投与を行う医療的ケア児。新卒入社したメーカーで産休を取得するが一太郎くんに障害がわかり退職。その後ヘレンに入園が決まって仕事を再開。シェアハウスの運営や広報を行う。

一太郎が障害をもって生まれ、私の生活空間は家と病院、療育センターだけに。24時間つきっきりの生活で、しだいに心に余裕がなくなりました。社会と仕事でつながりたいし、子どもの将来を思うとお金は必要。私は幸いなことに「ヘレン」とのご縁がありましたが、仕事に就きたくても就けず苦しんでいる方がたくさんいると想像すると、心が痛みます。
保育園に通うようになって、一太郎は目覚ましく成長しています。食事は鼻からチューブでとっていたのが、自力で食べられるようになりました。園でお友達からの刺激があり、また先生たちにカッコいい姿を見せたいという気持ちが出てきたようで。言葉もたくさん出るようになったのも、うれしい変化です。
障害がある子も親も、社会に触れて生きていきたい。障害がある子を授かる前は想像することもできなかったこんな願いが、当たり前にかなう日本になったらと願っています。

園のいすはすべて、目印やクッションでカスタマイズ。「ハンディや医療的ケアがある子ひとりひとりに合わせて保育していただけるので、安心して預けることができています」と千恵さん。

朝の8時から夕方6時半まで。子どもの個性に合わせた集団生活

朝のお集まりの時間。今度小学校に入学するYちゃん(右)は机に慣れるためにスタッフ手作りの机といすで参加。

感染対策で手洗いは1日に何度も。スタッフが毎回つき添い、洗い方を教える。

体が大きなS君の移動は2人がかり。「お子さんの体の状態や大きさによって介助方法を変えています」と作業療法士の新谷さん。

おべんとうもさまざま。Yくんは、鼻から胃に通したチューブでお食事中。

自分でおべんとうを食べるYちゃん。保育士の瀬戸先生が、楽しくおしゃべりしながらさりげなくケア。

一般的な保育園と同じくお昼寝の時間も。朝から夕方まで保育園で過ごすことで1日の生活リズムができる。

参照:『サンキュ!』2021年2月号「Find your SDGs」より。掲載している情報は2020年12月現在のものです。撮影/林ひろし、千葉顕弥(樋山さんの写真) 取材・文/『サンキュ!』編集部 イラスト/macco 編集/サンキュ!編集部


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