「優れた管理職能力」は幼少期から…小学校受験に学ぶ子育ての極意


現代ビジネス


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加熱する中学校受験ブームの裏で、実は小学校受験も同じく加熱しつつあるという。中学受験、大学受験の必要がない一貫校に入れて、子どもをのびのび育てたいという親が増えているそうだ。

 とはいえ、小学校受験をする家庭はまだまだ一部に過ぎない。「幼児期から勉強をさせる必要はない」と考える親も多いが、小学校受験は「子育て」の側面でも役に立つことがたくさんあるという。

 小学校受験専門塾で多くの子どもの勉強を見てきたからこそわかる「子どもの未来を広げる教育」とはーー

 2021年度の小学校入試で、いわゆる難関校といわれる早慶合格者を100名以上出した、今注目を浴びている『スイング幼児教室』代表の矢野先生に、受験をしない家庭でも参考になる「小学校受験から学べる子育ての極意」を連載していただく。

小学校受験は就職活動と同じ「多面評価」
 今回から、「小学校受験をヒントに【すぐに実践できる、子どもの未来が拡がる新しい学び】」というテーマで皆さんに教育についての情報を発信していきます。

 「小学校受験」というと、「ごく一部のセレブが行う受験」と思っている人もいるかもしれませんし、「幼児から勉強させてかわいそう」という声もあるかと思います。でも、そうとは一概に言えないのです。

 私たちは生涯にわたって様々な受験を経験します。その中で、小学校受験はとても多面的で子どもの可能性を広げる試験です。

 中学校受験、高校受験、大学受験、は基本的に学力をはかる試験。そして就職の時には、これまでやってきたこと、自分の個性などを聞かれ、グループディスカッションなどを通じ、また多面的に評価されます。小学校受験は、まさに就職の時と同様の多面評価となります。

 日本の教育は、入口の小学校受験、出口の就職試験は多面評価となり、その他の受験は学力試験が中心という流れになっているのです。そんな多面評価の小学校受験から、これからの教育に活かせることを皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 とはいえ、今回のこの連載で「小学校受験をしましょう」という話をするつもりはありません。私は、小学校受験の教室を運営する中で、子どもをどのように成長させていくか、ずっと考えてきました。

 そして、小さな教室ながら2021年度入試では、早慶合格者100人(慶應幼稚舎36人、慶應横浜初等部33人、早稲田実業学校初等部37人)を超えるまでに成長しました。日々子どもたちや子育てをする親と向き合う中で私なりに感じていることや、それに基づきご家庭で実践できることをお伝えしていきます。

小学校受験で「管理職研修」の内容が出題…?
 小学校受験には「行動観察」という分野があります。行動観察は、チームでブロックを高く積み上げたり、ボールを運ぶリレーを行ったり、みんなで絵を描いたり。グループに与えられた課題の中で、子どもがどのような行動をとるのか、を確認するものです。協調性や思考力、指示理解力、行儀などを、子どもの言動から評価していきます。

 そして課題の中には、企業の管理職研修で使用される内容もあるのです。例えば、2015年度に早稲田実業学校初等部で出題された、「グループでフープを指で持ち、皆がフープに触りながら、床に置くという」という課題。

 ここでのポイントは、「皆が『フープを床に置く』という同じ目標を持っているにもかかわらず、各自の『フープに触れていないといけない』という思いによりどんどんフープが上がってしまう。だから、誰かがリーダーになり『まずみんなの胸くらいまで少しずつ下げよう』と声をかけ、小さなマイルストーンを設定しながら進むと成功する」といいうことです。

 誰がリーダーになるか。それは、「目標を達成するためにどのようなプロセスにするのかを考えられる子」です。目標達成のためのプロセスを考え、周囲を巻き込みながら、試行錯誤し、達成していく。まさにプロジェクトマネジメントですね。スイング幼児教室の行動観察の授業では、「自分の学びになります」と特にお父さんのファンが多いのです。

 では家庭でこのような目標達成のプロセスを経験させるにはどのようにすればよいか。大事なことは、「計画を立てること」と「予測行動の練習をすること」です。子どもは次に何が起こるのか、先のことを考えて行動することが苦手です。予測行動ができないから、危険な行動をしたり、モノを落としたりしてしまうのです。

ポイントは「計画と予測行動」
 例えば、「幼稚園や保育園に行くまでの用意が遅い」という場合、親が「早くしなさい」と急かしたり、「洋服を着替えて」「歯を磨いて」など子どもに指示したりすることで、登園準備のスピードを上げていないでしょうか。

 こういう時こそ、計画を立て予測行動をするチャンスです。まずは登園準備としてやるべきことを親子で確認します【計画】。そして、一連のやることを頭の中に描いて、次の行動を予測しながら動けるように促していきます【予測行動】。

 子どもへの声掛けも「洋服を着替えなさい」ではなく、「歯を磨いたら次は何をすればよいかな」と質問していきます。慣れてきたら、2つ目3つ目まで予測できるようにし、それが決められた時間に間に合うのか、を親が問いかけながら進めていきます。

 このようにすると、先のことを予測しながら行動できるようになっていきます。そしてもっと成長すると、1日単位で予測できるようになり、さらには長期的な予測ができるようになっていきます。

 やるべき行動をマグネットなどに書き、行動したら裏返していく、などの子ども用のボードなども市販されています。一連の行動が視覚化されていると子どもにとってはわかりやすいのですが、一個やったらマグネットを裏返し、次に書いてあることを行う、という繰り返しでは、親は指示をだしていないにしても、マグネットから出された指示に従う指示行動になってしまいます。

 最終的には、自分の頭の中で予測し、計画を立てられるということが、とても大事なことなのです。もちろん最初はうまくいかないと思います。が、そのたびに叱ったり、「始める時間が遅かったからもっと早く動きださなきゃ」と答えを伝えるのではなく、「どうすればよかったかな」と一緒に考えてみましょう。
 
親は子どもが経験のないことを、先回りして伝えることや知識として教えることで、準備をさせようとします。言って聞かせることも大事なのですが、経験に勝るものはありません。

 失敗は成功のもと! 「失敗させない」ではなく、「失敗を乗り越える方法を考えられるようになる」ということが成長する上でとても大事なことだと思います。

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