仕事と両立 助産師にSOS 出産・育児での離職は損失 企業のサポートさまざま


産経新聞


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少子化問題による労働人口の減少が議論となって久しいが、福利厚生として出産や育児などの支援制度を設ける企業は多い。仕事との両立でつまずき、キャリアを捨てる社員が増えれば企業にとって大きな損失。足元ではコロナ禍で育児や体調に不安を抱える人も増えている。社員の働き方を変える企業の取り組みも多様化してきた。(田村慶子)

■生涯通じた悩みに

 理美容機器などを手がけるタカラベルモント(大阪市中央区)は昨年12月、助産師が社員の相談に答える「ライフステージ相談制度」を始めた。出産や育児といった人生の節目に生じがちな悩みをサポートすることで社員のキャリア形成を後押しし、業務の効率化につなげたい考えだ。

 制度はオンライン相談と年4回のセミナー開催の2本柱で構成。「産休明けで職場復帰したが、社内に搾(さく)乳(にゅう)する場所がない」「婦人科系の不調が疑われるが怖くて病院に行けない」--。直接、上司や会社に相談しづらい悩みを、タカラベルモントの顧問企業で育児支援などを手がけるウィズミッドワイフ(大阪市北区)の助産師がメールやオンラインの会話での相談に応じてくれる。

 24時間、年中無休で、自宅からのメール送信や匿名での相談も可能。セミナーは「ジェンダー(社会的・文化的な性別)」「育児」などのテーマで企画する予定だ。

 助産師は出産だけを扱うイメージが強いが、ウィズミッドワイフによると、全員が看護師でもあり、助産師の約半数が保健師の資格を持つ。「性教育や妊娠、育児、更年期など生涯を通じた女性の悩みに応えられる。子育てしながら働くのをサポートできるのが助産師」と担当者。こうした顧問助産師を採用する企業は増えており、ウィズミッドワイフは今年1月時点で9社と顧問契約を結んでいるという。

■男性の育休必須化

 大阪大学と連携し、女性社員のキャリア向上支援を強化しているのはダイキン工業だ。育休中の社員が対象で、同大学の一時預かり保育室に子供を預け、人間科学部と工学研究科が提供する心理学や工学英語など、自身がキャリア向上に役立つと思う科目を受講できる。

 コロナ禍の影響で当初の見込みより受講者は減ったものの、一昨年10月~昨年2月と昨年4~9月に実施し、計13人が受講した。「産休・育休で1年離職すると気持ちが下がったりする。育休中もモチベーションを上げ、仕事にスムーズに復帰してもらえるようにしたい」と担当者は期待する。

 一方、江崎グリコは出産・育児における夫婦間のコミュニケーションをオンラインで学ぶ「Co育てプログラム」を開発。自治体などが主催する「両親学級」がコロナ禍で相次ぎ中止されたのを受け、その代わりに自治体が住民ら向けとして使えるよう昨年9月から提供を始めた。妊娠中期、妊娠後期、育児期の3段階に分け、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」などを使いシミュレーション形式で受講できる。

 大阪府寝屋川市など3つの自治体で導入され、今年1月23日には江崎グリコの公式サイトでも公開して一般市民だけでなくグリコ社員も受講できるようにした。

 また男性社員の育休取得を促すため、子供の出生後6カ月以内に1カ月間の有給休暇取得を必須化する独自の制度を昨年1月に導入。社用パソコンやスマートフォンを一時返却してもらい、職場で仕事をカバーするなど徹底し「本気で育児に向き合えるようにした」(広報担当者)。対象となった男性社員は2月現在29人で取得率は100%。「人生を見つめ直すきっかけになった」「プライベートなことも上司や同僚と話しやすくなった」など好評という。広報担当者は「(仕事を特定の人が担当し、その人以外は仕事の進め方や内容が分からなくなる)『属人化』の解消にもつながっている」と手応えを話した。


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