モンテッソーリ教育でなぜ子どもはこんなに伸びるか


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Amazonのジェフ・ベゾスやGoogleのラリー・ペイジ&セルゲイ・ブリンら米大手IT企業の創業者。Wikipedia創始者のジミー・ウェールズ。日本やアジアで不動の人気を誇る経営思想家のピーター・ドラッカー。そしてアンネ・フランクやジョージ・クルーニー、英国王室のウィリアム&ヘンリー王子までも。この錚々たるメンバーにはある共通点がある。それは「モンテッソーリ教育」を受けた人たち、ということである。

 日本では、異次元の天才、藤井聡太棋士が3歳の時、「モンテッソーリ教育」を取り入れている幼稚園に入園したことが知られており、「藤井聡太棋士のように育てたい」と願う親たちがその教育法に大いに興味を抱いている。一方で、たくさんの不安や疑問を持っている人も多い。高額なのではないか。近くに幼稚園や学校がない。何歳から始められるのだろうか。

■ 始まりは貧困層のための保育施設

 「モンテッソーリ教育」はもともとセレブのものではなかった。マリア・モンテッソーリ博士は女性差別の残る19世紀のイタリアで、初めて女性として医学博士号を取得。日ごろから貧困層の子どもたちに接してきた博士はローマの貧しい地区に「子どもの家」という施設を開いた。3歳から6歳まで50名を受け入れて、精神科医と人類学者の観点から、画期的な教育法を確立した。

 『モンテッソーリ 子どもの家』は北フランス、ルーベにあるフランス最古のモンテッソーリ学校の幼稚園のクラスに2年3カ月にわたって密着したドキュメンタリー。現在、140カ国以上の国で普及しているモンテッソーリのメソッドとは果たして、どういうものなのか、実にわかりやすい内容になっている。

■ 自分の仕事に何十分も集中する子どもたち

 2歳半~6歳の子どもたち28人のクラスの映像が映し出されると、その何もかもに衝撃を受ける。子どもたちは自主性が尊重されており、思い思いの教具を使って、それぞれの時間を過ごしている。

 マットを片付けようとする者、読み聞かせをする者、水差しに水を入れる者・・・。誰一人騒いでいる子はいない。何十分だって、とてつもない集中力で、じっくり作業している。そうでない子はほかの子を熱心に観察している。子どもは騒ぐもの、落ち着きのないものという認識は間違い。子どもはやりたいことをやっている時、こんなにも夢中で静かだ。

 料理する子、お茶を入れる子、生け花する子、アイロンがけをする子、ろうそくに火を点ける子もいる。はさみ、包丁、アイロン、マッチ・・・。子どもが興味を示すものはなんでも用意してある。

 水差しや食器などもすべて陶器やガラス製で、プラスティックやアルミのような無粋なものはない。「危ない」「壊れる」「触るな」「近寄るな」。子どもの時、何度、注意されたろう。親のケアは果たして、正解だったのだろうか。過干渉や過保護。気遣っているつもりが子供の好奇心や探求心、成長の芽をみるみるうちに摘んでいるのではないか。

 例えば、おばあちゃんっ子の子どもの方がのびのび育っている印象があるのは、「あれしちゃダメ。これしちゃダメ」と即座に拒否されるのではなく、じっと見守って、根気よく付き合ってもらっているからではないか。子どもは人から注目されたい、愛されたいといつも思っているもの。モンテッソーリの先生は一人の子に時間をかけ、その間はほかの子によそ見したりしない。子どもは安心して、作業に取り組む。

■ 大人の教えが子どもの成長を妨げる

 「子どもは仕事が好き」という説にも、はっとする。クラスの子どもたちは大人のまねをしたい年頃なのか、せっせ、せっせと働いている。子どもは遊ぶのが仕事と思うのは大人の勘違いだろう。「外で遊んでいらっしゃい」とか、テレビを見せたり、ゲームをさせたり、スマホを持たせたり。子どもより親の都合を優先しているのではないか。確かにおままごとをして、料理や育児のまねごとをしてみたり、ヒーローに倣って地球を守ろうとしたり、子どもたちは本気で誰かの役に立ちたいと願っている。遊んでいるように見えて彼らは真剣なのだ。

 だから、クラスでは年上の子たちが年下の子の面倒を見る。新学期が来ると、それまで、最年少だった子たちが先輩になる。初めての学校に戸惑い、泣いている子たちの手本になろうと、ここでも役割を与えられて、彼らは張り切るのだ。ただ、つい大人がしてしまう、やってあげる行為、あるいはやり方を教えてしまうことは子どもたちの成長を妨げる。子どもたちはお互いを尊重し合い、本当に困っている子がいた時にだけ、ちゃんと手助けをする。

 「昔ながらの考え方の学校では、できない子を助けてはいけないと教わります。困っている子を助けるのはいけないこと、助けてもらうのもダメ。これでは人と人との繋がりは生まれません」

■ 人生で最も重要なのは生まれてからの6年間

 モンテッソーリの言葉は、最初から最後まで、目から鱗の連続だ

 「人生で最も重要なのは大学時期ではなく、生まれてから6年間の乳幼児期。この時期に知性や人間らしさを身につけ、思考力や感受性の土台を築くのです」

 「子供は私たちが与える以上に多くのものを与えてくれる」

 一番、心を動かされたのは、「子どもをわが師とし、自分は弟子となる」というフレーズ。子どもに教えるのではなく、むしろ私たち大人が教わる立場だということ。偏見を捨てて子供に向き合うとさまざまな発見がある。まずは先入観をなくしてみること。この映画には天才を育てる、いや天才が育つ、さまざまなヒントがちりばめられている。

 
『モンテッソーリ 子どもの家』

 2021年2月19日(金)新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国公開

 配給:スターサンズ、イオンエンターテイメント

 © DANS LE SENS DE LA VIE 2017

 監督・撮影・録音:アレクサンドル・ムロ

 日本語吹替:本上まなみ/向井 理

 2017年/フランス映画/105分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:Le maître est l’enfant/

 英題:LET THE CHILD BE THE GUIDE/日本語字幕:星加久実/日本語字幕監修:田中昌子 大原青子

 提供:スターサンズ、イオンエンターテイメント

 配給:スターサンズ、イオンエンターテイメント

 公式サイト:montessori-movie.jp 

 Twitter:@montessori_film
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