長時間のマスク、子どもの発育に悪影響?…使い方に注意


読売新聞(ヨミドクター)


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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」
 夏の暑いさなかにマスクをするのは苦痛でしたが、寒くなるとそういう声が聞かれなくなり、むしろ温かくて快適という人も多いでしょう。しかし、また春を迎え、暖かい季節になると、マスクによる苦痛を訴える人が増えてくることが予想されます。新型コロナウイルス対策に関しては、2歳未満のお子さんにはマスクは不要とされていますが、幼児から上の年になると、こども園でも学校現場でも全員がマスクというところもあります。

 ところが装着方法はまちまちで、マスクがゆるゆるだったり、感染防止効果に劣るウレタンマスクだったり、鼻を出していたりとさまざまです。息苦しいから、とりあえず格好だけでもマスクをしておかなきゃいけないからやっているという人も多いようです。

子どもの心身に悪影響 ドイツのオンライン調査

 飛沫(ひまつ)感染を防ぐにもマスクは重要ですが、この度、マスクによる心身への悪影響についての研究がドイツで行われました※。2万5000人以上の18歳以下の子どもを対象にしたオンライン調査です。これによると、平均の着用時間は270分(幼稚園90分、小学校240分、中高生360分)でした。昨夏、日本で行ったアンケート調査では300分以上が53%でしたから、日独、似たようなものですね。マスクの素材は、布製が65%で、サージカルマスク(医療用マスク)が21%でした。

頭痛、集中力低下、学習障害…

 このアンケートは、保護者が回答する形式で行われました。それによると、マスクによる症状として多い順に、頭痛(53.3%)、集中力低下(49.5%)、不快感(42.1%)、学習障害(38.0%)、眠気・疲れ(36.5%)、圧迫感(35.6%)、息切れ感(29.7%)、めまい(26.4%)、頸部乾燥(22.7%)でした。失神や吐き気といった症状も2割程度に見られます。さらに精神面としては以前と比べて、イライラするようになった(60.4%)、快活さが減った(49.3%)、園や学校への登校意欲減少(44.0%)、睡眠障害(31.1%)と、とても深刻な内容が続きます。このような症状を保護者へ訴えた子どもは全体の68%にも上りました。

 日本では大人へのアンケートを行いましたが(ロッテ調べ)、集中力の低下(51%)、肌荒れ(46%)、喉の乾燥、せきの増加(41%)、頭痛やめまい(36%)という結果でしたので、症状としては似通っています。

 ただしこの研究の筆者たちも議論しているように、すべての症状がマスクを装着することから引き起こされるとも考えられませんし、政府のコロナ政策に対しての保護者の姿勢も症状の記入に影響し、コロナ対策に不満を感じている保護者は、マスクによる症状をひどく回答する傾向にあったようです。一方ではマスクの影響は心身に対してほとんどないという研究もありますから、今後のさらなる調査が必要でしょう。

 もちろんいますぐマスクを外す必要はありませんが、だらだらとマスクを着けていればよい、マスクさえ着けていれば感染予防できている、という考えはやめた方が良いですね。発達段階の子どもが多い家庭では、外部との接触の少ない場所などでは積極的にマスクを外してコミュニケーションしあうことも求められます。

マスクの適切な着脱、保護者が見極めを
 インフルエンザと比較すると、新型コロナウイルスは肺炎を起こしやすく、致死率も高いようですが、これは大人に限ってです。小児には、インフルエンザよりもずっと弱いウイルスです。マスクの装着理由は、子どものためと言いながら、大人のため、いじめられないため、同調圧力など、いろんなことが考えられます。病気によりマスクをしなければならない子どももたくさんいます。保護者が子ども一人ひとりに向き合いながら、マスクを着けた方が良いのか、外した方が良いのかを見極める必要があります。

 マスクに対する否定的な発言により、だるさや頭痛などいろいろな症状が引き起こされることもありますし、子どもたちに不必要なストレスを強いることにもなります。もちろん子どもの健全な発達、発育にとって、マスクがどれくらい影響を与えるのかはまだはっきりとしていません。

 子どもは、歌ったり話したりするときに放出するエアロゾルが大人より少ないことも示唆されていますし、季節性インフルエンザと比べても子どもの重症化はほとんどないため、子どもが新型コロナウイルス感染のクラスターの中心になることはめったにないと思われますが、それにしてもマスクの生活はこれからも続くでしょう。

口の汚れや虫歯、歯肉炎が増加?
 医療機関への受診控えや、ダラダラ食いや口呼吸が増えたことなどで、口腔(こうくう)の汚れが気になるという歯科医の意見をよく耳にしますし、実際に虫歯や歯肉炎の増加も目立つようになってきています。マスクで隠れている子どもの口の中を、保護者が時々確認したり、仕上げ磨きの時に十分にチェックしたりすることも必要でしょう。そして、口の中の病変を見つけたとき、気になるときには歯科や小児科への受診をためらわないようにしましょう。

今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長
 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。
 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。
 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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