児童相談所のスリム化を 全国家庭養護推進ネットは制度改革提案


週刊金曜日


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実親の元で育てるのが困難な子を預かる里親家庭への支援や、行政権限で一時保護した子どもの養育などを、施設など民間による新たな社会福祉事業として児童福祉法に規定し、措置費が支払われるように制度化することで、児童相談所(児相)業務から切り離す。そうすれば児相の任務を虐待家庭に対する安全確認や一時保護などの介入機能などに特化し、スリム化できるのではないか――。

 児童福祉関係者らの連絡組織・全国家庭養護推進ネットワーク(藤井康弘代表幹事)は1月10日、オンライン限定で開催した全国フォーラムで、そうした趣旨による児童養護の制度改革案骨子を発表した。児相の役割見直しに大胆に踏み込んだ内容で、関係者の議論が集まることが予想される。

 2016年改正の児童福祉法は理念規定として、すべての子どもに(1)適切に養育され(2)生活を保障され(3)愛され、保護され(4)自立が図られる、との四つの権利があることを明記(第1条)。また、子どもの最善の利益優先の原則、代替養育でも施設でなく家庭養育優先の原則を明確にしたことで児童福祉関係者の注目を集めた。

 しかし里親への子ども養育委託数は大きくは増えておらず、19年度に全国の児相が対応した子ども虐待相談件数は過去最高の19万3780件(厚労省まとめ速報値)に達するなど、増加の一途だ。

 さらに改正法に基づき、各都道府県に作成が求められた「社会的養育推進計画(19年度)」の目標値は地域間格差が大きく、里親への養育委託率では全都道府県の間で最大5倍の格差がある。

 前記の児童福祉法改正を契機に設立された同ネットは「新しい支援制度には、取り組む民間機関が踏み出せるインセンティブを付けたり、義務的経費である措置費が支払われる制度新設などの構造改革が必要。児相の負荷を軽くすることも重要だ」と話している。

(小宮純一・ジャーナリスト、2021年1月22日号)


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