感性育くむデザインで子供の未来を発育 学童保育の運営や海外展開も視野 「株式会社ONE ROOF」菊地元樹社長


夕刊フジ


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【トップ直撃】

 広大な宇宙空間をイメージしたこども園や、江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎の作品とともに生活する保育園など、常識にとらわれない斬新なデザインの数々。視覚から園児だけでなく保護者も魅了する施設で、子供たちの未来を発育する。90年以上の歴史とノウハウを活用し、学童保育の運営や海外展開も視野に入れている。(松村友二)

 --宇宙や葛飾北斎をテーマにするなど、独創性の高い保育施設を次々に開設しています

 「地域の調査をした上で、特性を生かしてコンセプトを決定し、デザイナーとともに具体化しています。モダンに丁寧な作り込みをすることで、大人が見ても美しいものは子供が見ても美しいものだと思っています。日常的に普段は触れない科学や美術に触れてもらうことで、感性が育つと考えておりデザインにはこだわりを持っています」

 --保育施設の開設に重要な点は

 「地域に愛され、何十年もその地域に残るものにしなければなりません。地域の社会資源の一つとして保育施設が残る必要がありますし、園児がお祭りに参加するなど地域の活動にも積極的に参加しています。子供たちがその地域を愛し、『いつでも帰ってこられる場所』として、大人になってから自分の子供を入園させる事例もあります。さらにほとんどの施設が駅近に開設しています。保育施設を利用されるほとんどの親が仕事をしているため、保育施設の利便性は重要です」

 --都心部では待機児童問題が残る一方で、少子化は止まりません

 「子供の数は減る一方ですが、働く環境は整いつつあり、保育園の利用者数は増えています。政府が待機児童ゼロを目標にしていることから今後も保育園は増えると思っています。ただ従来のような『預ける場所』から、教育まで求められる場所になっていますから、独自の教材作りも行っています。小学校の受験にも対応できる教材で、学校生活で後れを取らないためにも、10進法や数量などの学習を遊びの中で得て、テキストで復習してもらうというサポートを行っています」

 --著名人も度々、保育施設を訪れているそうですね

 「マイナースポーツやボードゲームなど、子供のときに興味を示していれば将来の可能性が広がっていたこともあるかもしれません。バスケットボールや陸上のオリンピック選手、元横綱貴乃花の花田光司さんにお越しいただいたこともあります。子供たちもオーラを感じ取り、喜んで体験してくれますから、こちらができるのは機会を提供してあげることですね」

 --ホテル日航成田とともにJALグループ向けの企業主導型保育施設「なりた空(そら)の保育園」も展開しています

 「スリランカ人の園長をはじめ外国籍のスタッフが多く、生活に英語があります。さまざまな人種・文化に触れ、バイリンガルの園児もいます」

 --新型コロナウイルスの影響で保育施設を利用しない人もいると報じられています

 「なかなか“3密”を避けることが難しい事業です。しかし食事の際には、交互に座ってもらい、以前から厳しかった従業員の健康管理をさらに厳しく行っています。もちろん従業員に対する心のケアも行っていますし、昨年の緊急事態宣言時には、ほぼ閉園状態でしたが、職員の給与は全額補償しました。また保育のパワーを何かに使おうという思いから、全職員で手作り玩具を作成し、ネットを通じて地域の子供たちに配布しました。大変好評でした」

 --今後の事業展開は

 「少子化が進む日本のみで考えれば業界が縮小し、培ってきたノウハウの消失も考えられます。そのため海外展開は視野に入れています。例えば、キュウリが離乳食として利用できることは保育業界では当たり前ですが、世間では当たり前ではないと思いますので、そのような知識や情報をどんどん発信するための場所を提供したいです。知育玩具のVR・AR化にも取り組んでおり、発達に応じた玩具を誰もが手に入れられるようにしたいと考えています」

 ■他の経営者との会食で情報収集

 【家族】男4人兄弟の次男で、両親は保育園の経営者。兄弟も全員保育や教育関連で働く。

 現在は1人暮らし。「ペットとして猫が欲しいんです。お恥ずかしいですけど、帰ったときの癒やしが欲しいので」

 【会食】「今は自粛しているので行けていないですけど、飲みに行くのが好きですね。1人で行くこともありますけど、他の経営者を誘うことが多いです。自分にないものをたくさん学べて、いつも新鮮ですし、経営に生かされている部分も多くあると思います」

 【健康法】ジムや食事制限のほか、コロナ禍でアウトドアであるゴルフの回数も増えた。「体形を保つように心がけていますし、ゴルフは週に1回ほどのラウンドで90くらいです。いろいろな経営者の話を聞くことができる場ですね」

 【酒量】「休みの日には自宅で飲みます。吉四六(きっちょむ)を箱買いし、梅酒ソーダ割りにするのが大好きですね」

 【最近購入して気に入っているもの】自宅には物であふれさせることのないミニマリスト。物が多い部屋を好まず、いつ来客があってもいいほどに片付いた状態だが、一方でオフィスのデスクの上はキレイとはいえない状態だという。

 【仕事以外に熱中していること】海外を訪れること。「(コロナ前まで)旅行でも仕事でも行くことは多いですが、主に東南アジアです。すぐに帰ってこれるという利点がありますし、日本と違って、将来爆発的に発展するだろうという活気があふれているというのが魅力ですね。発展のタイミングで保育事業を広めたいと思います」

 【情報収集法】「ネットで見る程度で、あとは経営者とテーブルを囲む会食です。やはり新聞やテレビ、ネットなどで入手できない情報なので、重宝しています。今はできないですけど、それぞれの専門的な立場から話を聞くことができ、経営者としての生き方を指南してもらうこともあります」

 【これまでの最高の瞬間】保育園で子供たちと触れ合うこと。

 「園長先生として、卒園式のピアノを伴奏していたら感動のあまり止まってしまって…。でも子供たちが大声でカバーしてくれたことが忘れられません。あのときの感動を思い出して、今でもピアノの練習をしたりしますし、やっぱり成長を感じたり、子供たちとの触れ合いの時間が一番幸せですね」

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 【会社メモ】企業の特色を生かして運営されている企業主導型の保育施設や学童保育の運営を社会福祉法人東京児童協会とともに行う。アライアンスの運営施設は都内22園、ホテル日航成田内施設の1園。2023年には東京駅直結の認定こども園の運営も決定している。新しい子育て社会のネットワークを築くため、海外への保育事業の展開も目標とする。本社・東京都江戸川区。17年8月設立。売上高約50億円、従業員数約700人(株式・法人計)。

 ■菊地元樹(きくち・もとき)1982年3月生まれ、39歳。東京都出身。明治大卒業後、一般企業に就職。2007年、白河かもめ保育園に事務職として就職し、10年に同園園長就任。14年社会福祉法人東京児童協会事務局長、17年経営戦略室長就任。同年、株式会社ONE ROOF代表取締役社長就任。大手航空会社の社員を主に対象とした「なりた空の保育園」のプロデュース・運営を行う。


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