母と娘の発達障害を公表する家族YouTuberパパ・ママの思い「障害は恥じゃない」


女子SPA!


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登録者数11万人(4月6日時点)のファミリー系YouTubeチャンネル「あっちゃんファミリー」。10歳のあっちゃん、7歳のすっちゃんの姉妹を中心に、パパとママの4人家族のほんわかとした雰囲気が人気です。

 このチャンネルでは、あっちゃんとママがADHD(注意欠陥・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)を持つ発達障害であることが公表されています。

 昨今、発達障害に対する世間の関心が大きくが高まりつつあるなかで、あっちゃんファミリーのパパとママに、あっちゃんが診断を受けるまでの経緯や、子どもの発達障害に悩む親御さんへのアドバイスなどを聞いてみました。

発達障害は恥ずかしいことじゃない
――「あっちゃんファミリー」を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

パパ:あっちゃんとすっちゃんがキッズYouTuberに憧れていて「YouTubeをやりたい」と言っていたんです。でも当時はどんな動画を作ればいいのか分からなかったので、まずは愛猫を主役にした「ふわふわこっちゃんねる」を始めました。半年くらいして動画の作り方が分かってきたので、当初作りたかった家族チャンネルに挑戦することにしました。

――YouTubeでお子さんの顔を出すことについてはどう考えていますか?

パパ:“バイトテロ”といって、少し前に高校生や大学生くらいの子たちが非常識な動画を出して問題になったことがありましたよね。それを見て、「高校生くらいだと、親の目が届かなくてやってしまうのかな」と思ったんです。それなら、親の目の届くうちに一緒にYouTubeを始めて、ネットリテラシーの教育も含めて責任を持ってやろうと思いました。

――子どものうちに親と一緒にネットリテラシーを学ぶのは大切ですね。動画であっちゃんがADHD、ASDであることを公表したのはなぜなのでしょうか?

ママ:発達障害をメインテーマにしようというのではなく、家族チャンネル内のテーマの一つとして見てもらって、そこから私たち自身を好きになってもらえたらいいなと思っていました。そもそも発達障害は、その人自身が何か劣っているわけではなく、あくまでも“今の社会”のシステムと本人の持つ特性との間に障害があるということ。自分の特性をいかせる環境を見付けることが出来れば障害ではなくなるし、むしろ大きな武器になることもあると思うんです。だから別に隠したり、恥ずかしいと思う必要はないと思っています。

――動画にはどんな反響がありますか?

パパ:いくつかある動画の中でADHDの動画の再生回数が多かったので「情報を求めている方が多いんだな」と思いました。「自分も当てはまる」という声が多かったです。

ママ:動画を見て「知人にも同じような特性を持っている人がいる」という方も多くて、「自分はその人に冷たくしてしまっていたけど、考え直すきっかけになりました」という感想もありました。「当事者としてすごく悩んでいたけど、前向きに考えるきっかけになりました」という方もいて、温かい反応が多かったですね。

小3のころ「忘れ物が多い」「ぼーっとしている」と指摘
――あっちゃんが発達障害の診断を受けるまでには、経緯があったのでしょうか?

ママ:最初に指摘されたのは、3歳で幼稚園のプレクラスに入ったときでした。園でまったく話さず、活動に参加しなかったそうで、園長先生に「発達に遅れがあります、この子おかしいですよ」とはっきり言われました。まだ園との信頼関係ができていなかったこともあり、すごくショックを受けました。家では喋ったり踊ったりと普通に過ごしていたし、どちらかというと周りの子に比べて言葉の発達が早かったので、遅れがあると思ったことがなかったんです。園長先生に私がそう言っても、全然聞き入れてもらえませんでした。

――親としては非常にショックですね。

ママ:今思えば、ASDは変化を嫌う特性があるので、新しい場所に馴染むのに時間がかかっていたのかなと思います。園長先生を含め、他にも合わないと感じることが多かったので退園をしました。翌年の4月に年少さんから別の幼稚園に入ったのですが、そこでは問題があると言われることはなく、楽しく通えたのでよかったです。そのあと小学校に入学して3年生になったころに「忘れ物が多い」「授業中ぼーっとしている」と先生からお話しがありました。

――1、2年生とは何が違ったのでしょうか?

ママ:3年生になると科目が増えるので、持ち物が多くなって忘れ物をしたり、何をする時間なのか分からなくなって、授業中にぼんやりすることが多くなってしまいました。担任の先生は「夜更かしをしてるんじゃないか」と思っていたようです。「家で何時に寝かせていますか」「家庭でどういった指導をしていますか」と聞かれました。家に来て、生活環境をチェックされたこともあって……。結局、家庭の問題ではないと分かってくださいました。

――それがきっかけで、診断を受けようと考えられたのでしょうか?

ママ:先生のお話しを聞いて「発達障害だろうな」と思ったんです。実は甥っ子がすでにADHDの診断を受けていたので、その可能性が頭の片隅にありました。それもあって診断を受けることにしました。

娘の診断をきっかけに、自分のADHDにも気づいた
――診断を受けることに不安はありませんでしたか?

ママ:「絶対に診断はあったほうがいい」と思っていました。甥っ子は、診断前は「きかん坊」だと思われていて、親も「どういうしつけをしているんだ」と周りに責められていたんです。それが診断がついたことで説明しやすくなり、療育を受けたり、保育園や小学校で配慮してもらえるようになりました。診断によって、どうサポートすればいいか分かりやすくなると思ったんです。

 診断の結果、あっちゃんはADHDとASDでした。発達障害の本を読むと、ADHDの「不注意型」のチェックリストに私とあっちゃんがすべて当てはまっていて、私自身がADHDだと気づくきっかけにもなりました。

――「不注意型」とはどんな特性があるのでしょうか?

ママ:とにかくうっかりしています。忘れ物や落し物が多くて、時間の管理が苦手です。逆に好きなことに対してはすごく集中力があります。私の場合は提出物や事務関係の仕事が大嫌いで、YouTubeの編集作業は何時間でもやっていられます。

――パパさんは、診断をどう受け止めたのでしょうか?

パパ:あっちゃんだけではなく妻もADHDでしたが、私は妻と暮らしていてなんの問題も感じたことがなかったんです。だからとくに悲観することはなく「ママと一緒なら大丈夫なんじゃないかな」と思いました。

――あっちゃん自身は、発達障害をどう受け止めていますか?

パパ:診断が出るまでに時間がかかったので、確信した時点で本人に伝えたのですが、人気YouTuberには発達障害を公表している人が多いということもあって、あっちゃん自身は前向きに捉えています。

困りごとは「仕組み作り」で解決
――診断を受けて、どんなサポートをするようになったのでしょうか?

ママ:私なりに「ADHDの対応表」をまとめた資料を先生にお渡しして、それに基づいて指導していただいています。例えば「耳からの指導はわかりにくいので絵で説明する」などです。聴覚過敏があって、たくさんの声がする教室が苦手なのでイヤーマフを持ち込むことを許可していただきました。ホコリに敏感なので、本来はローテーションの掃除場所を屋外に固定してもらっています。音やホコリなど「感覚過敏」があることはASDの診断を受けて始めてわかりました。

 あと、落し物が多いのでクラスに「あっちゃんボックス」を設置していただいて、あっちゃんの落し物を入れてもらうようにしています。本人の机に戻してもらっても、気がつかずにまたポイと落としてしまうんです。だから「物が無くなっていたら落し物ボックスに入っているよ」と説明して確認するように言っています。

――先生だけではなく、クラスメイトも理解してくれているんですね。

ママ:今はあっちゃん以外にもそういう子が多いので、クラスの子はすんなり受け入れてくれているようです。

――お家ではどんなサポートをしているのでしょうか?

パパ:忘れ物が多いので、朝送り出す前に必ず持ち物をすべてチェックします。教科書を学校に忘れてくると宿題ができなかったりするので、教科書は全部スキャンしてタブレットに入れています。もし今後、教材のタブレット化が進めばこの手間もなくなりますね。今までの常識にとらわれて悲観するのではなく「何か工夫できることはないか」と考えるようにしています。

――あっちゃんが失敗したときは、どう対応しているのでしょうか?

ママ:私自身の経験で、苦手なことはいくら気をつけていても絶対うまくできないと分かっているので、叱るよりも「あっちゃんボックス」のように“仕組み”を作って解決するようにしています。

パパ:発達障害だからというより、子育てをする上で人格否定をしないよう気をつけています。あっちゃんは好きなことに対する集中力が高くて、びっくりするくらい絵が上手だったりするんです。苦手なことを叱るよりも、得意なことを伸ばしてあげたいと思っています。

悩むより、未来のために時間を使ってほしい
――障害を持つ子の兄弟である「きょうだい児」が抱えがちな孤独感や、そのケアについて注目されることが多くなっています。妹のすっちゃんへの接し方で、気をつけていることはありますか?

パパ:たしかに視聴者の方から「あっちゃんが中心で、すっちゃんが相手にされていないんじゃないか」というコメントが付いたりします。動画だけを見るとそういう印象があるかもしれないのですが、実際は下の子のほうが手が掛かったりしますし、発達障害は関係なしに、満べんなく愛情を与えるようにしています。

 あっちゃんは外の刺激に弱いので、外出すると疲れやすいのですが、そういうときは両親のどちらかがあっちゃんと一緒に休んで、一方はすっちゃんの好きなところに一緒に行ったりしています。

――現在「自分の子が発達障害なのでは」と悩んでいる親御さんにアドバイスはありますか?

パパ:何をするにもすごく時間がかかるので、まずは行動することが大切だと思います。うちの場合、近くに発達障害の子どもを診てくれる病院が少なく、予約をして半年待ちましたし、この4月から特別支援学級に進級するのですが、希望してから入れるまで2年かかりました。これは自治体や学校にもよると思いますが、申し込みの時期がかなり前に設定されていたりするので、診断を受けてもすぐ入れるわけではないんです。

 あっちゃんは教室のざわめきが苦手なので、少人数制でサポートの手厚い支援学級を選んだのですが、通常学級でツラそうにしているなら早く行動したほうがいいと思います。早く診断してもらって、それを受け入れられれば、プラスに働く行動を起こせるようになりますから。

ママ:昔にくらべて発達障害の診断を受ける子どもが増え、支援学級も私たちが子どものころのイメージとはかなり変わってきていると思います。私も子どものころ、学校の授業がしっかり聴けずに少人数制の塾で勉強を進めていましたが、支援学級も同様に、あっちゃんのペースで勉強を進められるのかなと思います。

「発達障害かも」と悩むことより、子供の未来に向かって一刻も早く時間を使ってほしいです。私たちは困りごとの根本が分かったことで、対応の仕方が変わりました。診断を受けて特性を知ることは、未来への最低限の1歩だと思っています。

<取材・文/都田ミツコ>
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