幼保の現場と学生つなぐ元保育士 就職支援会社を設立、23歳奮闘中



西日本新聞
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現役の保育士や幼稚園教諭と志望学生をつなぎ、就職を支援する会社「Saticle(サティクル)」が福岡市で設立された。立ち上げたのは元保育士の悦田愛笑(まなえ)さん(23)だ。自身の就職活動の経験から保育所や幼稚園は「就職前に得られる情報があまりに少ない」と痛感。保育や幼児教育の現場の「熱」を学生にどう伝えるか。ミスマッチを防ぎ、人材不足にあえぐ現状を変えようと奮闘中だ。

 設立は今年1月。今月26日に同社として初めての合同説明会をオンラインで開催。福岡県内八つの保育所と幼稚園の施設長や職員、学生65人が参加した。公式サイト「えんリクマッチ」には同県内25の保育所や幼稚園の情報を無料で掲載。特徴は記事の内容を労働条件ではなく、それぞれの「保育理念」や「教育方針」に特化したことだ。

 契機は2018年、保育士を目指して学んでいた大学3年生のころ。一般企業志望の友人たちはインターンシップ(職場体験)や企業説明会に次々と参加するが、保育士志望者は各施設から大学に届く1枚紙の求人票しかない。内容は勤務時間や給与など基本的な労働条件だけだった。

 どんな理念に基づきどんな保育が行われているのか。熱意をもって保育を志す学生が最も知りたい情報がない。インターネットで検索しても、各保育所の公式サイトはごく簡素で、10年間更新されていなかったり、そもそもサイトがなかったり。説明会もなければ、職場見学の機会もほとんどない。「これでは絶対にミスマッチが起きる」。保育士不足の原因の一つはここにあると確信した。

 同年秋、仲間と学生団体「Emilllia(エミリア)」を設立。福岡市内の約400の保育所や幼稚園に電話をかけ、現役の保育士や教諭と志望学生が交流する座談会を隔月で開催した。昨春、晴れて福岡市内の保育所に就職。その傍らエミリアの活動も続け、6月と8月にオンライン説明会を開催。福岡県内20の施設と全国の学生200人余りが参加した。

 「この先輩と一緒に働きたい」「こんな園で働きたい」。活動を通じ、約20人の学生が希望する保育所や幼稚園に就職した。手応えを得た悦田さんは活動に専念するため保育士を辞め、会社設立を決意した。

 今後はえんリクマッチを九州沖縄に拡大する予定。合同説明会や施設ごとの座談会なども継続する。さらに学生の感想などを分析し、職場の魅力をどう発信するかを施設側に助言する。悦田さんは「求人票や教育実習では得られない情報を学生に届け、丁寧に深く現場を知ってもらいたい」と話した。 (本田彩子)

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2年未満の離職率高く

 厚生労働省の調査(2018年)によると、保育士の登録者数は約154万人で、うち実際に保育所などで働く人は約59万人。17年の離職率は9・3%(公立5・9%、私立10・7%)。2年未満など経験年数が低いほど離職率は高い。東京都の調査(19年)によると、退職理由で最も多かったのは「職場の人間関係」(33・5%)だった。



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