巣ごもり影響か、子どもの肥満進む 視力も悪化傾向





日本経済新聞
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文部科学省は28日、2020年度の学校保健統計調査の結果を公表した。肥満傾向があるとされた児童の割合が高校1年を除く全学年で上昇したほか、裸眼視力が1.0未満の小中学生の割合も過去最悪を更新した。新型コロナウイルスによる巣ごもりが子どもの健康に悪影響を及ぼした可能性がある。

調査では全国の国公私立の幼稚園と小中高校に通う児童・生徒約69万人を対象に、身長と体重などを調べた。標準体重を20%以上上回る「肥満傾向児」の割合は、高1を除く全ての学年で前年度から増加した。特に増加幅が大きかったのは小学5年の男児で、前年度から3.6ポイント増え14.2%に達した。

他の学年でも割合の増加は顕著で、幼稚園児(5歳)と小1~6、中学2年では比較可能なデータが残る06年度以降、過去最多を記録した。

国は20年春、全国の小中高校などに一斉休校を要請した。休校が終わった後も部活動の制限が相次ぎ、自宅で過ごす時間が増えた。肥満率の悪化の背景には、新型コロナの感染拡大に伴う子どもたちの運動不足があるとみられる。

スポーツ庁が2月に高校生に部活動の頻度を聞いたところ、「週3日以上」と回答した割合は感染拡大後では54.2%で、拡大前の78.2%から大きく下がった。「実施なし」も13.4%に上った。

今回の調査では児童・生徒約334万人の視力も調べた。裸眼視力が1.0未満だった小学生の割合は37.5%で、前年度から約2.9ポイント増えた。約0.8ポイント増えた中学生(58.2%)とともに、いずれも過去最悪の割合となった。

例年は4~6月に調査を実施するが、20年度は新型コロナによる一斉休校の影響で調査期間を年度末まで延長した。同省の担当者は「成長が著しい時期であり、過去の数値と単純比較はできない」とした上で、「視力の悪化が続いていることは事実。家庭でのスマホの利用時間が増えていることが要因のひとつではないか」と分析する。

内閣府の20年11~12月の調査によると、10~17歳の約3400人のうち、1日3時間以上インターネットを使うと答えたのは52.1%。平均利用時間は約205分におよび、前年度調査から約23分長くなった。

文科省は24年度からデジタル教科書の本格導入を検討しているが、専門家からは端末の利用時間が増えることによる視力の一層の悪化を懸念する声も上がる。

これを受け同省は今年度から、全国の小1~中3の約9千人を対象とした初の大規模調査に乗り出した。近視や乱視、遠視など目の症状を詳細に分析し、端末の利用時間との因果関係も調べる。結果は年度内に公表する方針だ。

子どもの成育に詳しい和洋女子大の村田光範・保健センター長は「休校や長引く外出自粛で生活が不規則になり、肥満率や視力の悪化につながった可能性がある」と指摘。「幼少期の健康は、大人になってからの健康の基盤にもなる。正しい知識に基づく正しい対策を取り、できる範囲で感染拡大前の学校生活に戻す工夫が求められる」と話している。



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