子どもの電話相談「雑談したい」が多数という衝撃 話を聞かず、すぐ怒ったり助言する大人たちへ





東洋経済オンライン
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中学生の25人に1人が不登校、小学生は5年で倍増と、いま日本の子どもと学校に大きな変化が起きています。子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、いったい親はどう対応するのがいいのか。
自身も経験者である不登校新聞編集長の石井志昂さんが伝えたいこととは? 石井氏の著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』からご紹介します。

「雑談をしたい」は相談のトップ3に入っている

「チャイルドライン」という18歳までの子どものための電話の相談機関があります。子どもたちは親や先生、友達には言えないことを相談したくて電話をかけてくるわけですが、寄せられる相談内容のトップ3にランクインしているのが、「雑談をしたい」です。

この傾向はもう10年ほど続いていて、思春期の子どもたちが何でもない話をする相手に困っているということを浮き彫りにしています。

雑談などの何でもない時間を親子で過ごしていると、子どもの中に無条件の自己肯定感が育まれるのではないか。私は、そんなふうに考えています。

雑談は、相手に何も求めない時間とも言い換えられると思います。そういう時間をシェアすることで、「あなたはそこにいていいんだよ」というメッセージを子どもは受けとることができます。

言葉で「愛しているよ」「大切にしているよ」と伝えることも大切です。でも、言葉にするのって、難しいですよね。あえて言わなくても、子どもに気持ちを伝えることができる。それが雑談のよさではないかと思います。


普段から雑談ができていると、子どもに何かあったときや、なんかつらそうだなと思ったときに、「どうしたの?」と聞きやすいと思いますし、子どもも話しやすくなります。

子どもにとって話しやすい相手とは、雑談ができる相手です。親子の間で、普段から雑談をしているか、ちょっと振り返ってみてはいかがでしょうか。子どもに話しかけるときに、「手は洗ったの?」「テレビは消しなさい」「宿題は?」など、注意から会話が始まることはないでしょうか。

では雑談をどうやって始めるのかといえば、相手が好きなことを聞くのがいちばんいいと思います。子どもがゲームをしていたら、「そのキャラクターは何?」と聞いてみる。「ゲームばっかりして」とため息をつくのではなく、子どもがしていることに興味を持って話しかけてみる、ということです。

親から見れば子どもは無駄なことをしているように思えることもありますし、小言を言いたくもなります。けれども、親が雑談の相手になってくれると、子どもは自分の気持ちを整理でき、興味や関心事を広げていけます。

子どもが好きなことをやってみる

子どもが思春期に入り、雑談に乗ってきてくれないようでしたら、子どもが好きなことをやってみるといいと思います。子どもが動画を見ていたら、動画を見てみる。ゲームをしていたら、ゲームをしてみる。必ずしも同じ動画やゲームでなくても構いません。こういう間接的な肯定は子どもからの反発を招きづらいのです。

子どもが話に乗ってきてくれたところで気をつけたいのは、途中で話を違う方向に持っていかないことです。私の母も、ゲームの話をしていると、「じゃあ、ゲームを作る人になったらいいと思うよ」などと言うことがありました。

子どもがしたいのは「今」の話です。今、楽しんでいることを聞いてほしいのに、そんな将来の話を持ち出さないでほしい。「また誘導が始まった」と、思ってしまうわけです。

子どもが好きで楽しんでいることは、子どものほうが詳しいですし、子どもに教えてもらうという態度で話すのがいいと思います。子どもとの雑談に困ったとき、テレビがあると話しやすくなります。今なら動画サイトでもいいと思います。

テレビや動画といった対象物を挟むことを「会話の三角形を作る」とも言いますが、三角形を作ることで親と子があまり向き合わずに会話をすることができます。

あえて向き合わないようにする理由は、子どもと向き合うと注意をしたくなるから。向き合わずに雑談をしていると、心が穏やかになるといわれています。三角形を作るほうがお互い無駄な衝突をしなくて済むと思います。

子どもは、よく「見て!」と言います。例えば、「ゲームをクリアしたよ」と言ったり、何か作って見せたり、逆立ちをして見せたりです。

子どもに「見て!」と言われたら、もちろん、ちゃんと見てあげるに越したことはありません。でも、毎日毎日、それが続くと、保護者の方も大変だと思います。時間に追われるなか、そのたびに家事の手を止めるのも大変です。

そういうときは、真剣に見なくていいんです。時間に追われていたら「見たよ!」と言って、実際は見ていなくてもいいと思うんです。

でも、子どもがいつもは話さないような話をしているときや、悩んでいそうなとき、うつむいてしゃべっているときは、家事や仕事の手をいったん止めて、最後まで話を聞いてあげてください。

学校へ行きたくない、いじめにあっているということがなくても、子どもには特有の悩みがあります。例えば、いつか自分は死んでしまうかもしれない、親が死んでしまうかもしれないという、漠然とした不安であることもあります。

初めて経験する価値観や恐怖心に揺れ動いているときに、困ったり、迷ったりして、親に話し始めるということもあるのです。

子どもの話をコントロールしない

子どもが話し始めたら、先に立って話を先導しようとせず、あとをついていくように話を聞いてあげてください。

子どもの話を聞きながら、大切なことだから伝えなければいけないとか、間違っていることは指摘しなければいけない、という思いに駆られることもあると思います。

でも、まずは聞き手に徹してあげてください。子どもの話をコントロールしようとしたり、保護者の方が期待する結論に結びつけようとしたりするのは、やめてあげてほしいのです。言いたくなる気持ちを抑えて、たくさん聞いてあげてください。

例えば、子どもが「宿題が終わらなかったんだ……」と話し出したときに、「だから早めにやりなさいって言ったよね!」と口を挟みたくなるところをぐっとこらえて、「そっか」とうなずいて聞いてあげてください。


そうやって子どもの気持ちを聞いていくと、子どもがどんどん別の話をしていくことがあります。その奥にあるのは宿題の話ではなく、実は人間関係に悩んでいたり、先生との関係に悩んでいたり、自分の特性について悩んでいたり、ということがあるのです。

話しながら気持ちが整理されて、子どもが自分の心の奥にある気持ちに気づくこともあるでしょう。だから、揺れる気持ちもそのまま聞いてあげてほしいと思います。

小さい子だと、そのときに泣いてしまうことがあるかもしれません。中学生くらいでもそうです。これは親子限定で言えることですが、そういったとき、小学生くらいであれば抱きしめてあげるのがいいと思います。中学生以降だといやがる子もいますので、手を握ってあげてください。それだけでも子どもはほっとします。

話をきちんと聞いてもらう前に、問題を勝手に決めつけて、求めてもいない情報を提供されたら、誰でも嫌なものです。この気持ちは、子どもでも同じなんだ、ということを忘れないでほしいと思います。

心から共感はできなくても「傾聴役」に徹する

また、子どもが不安を抱えているときは、「気にするな」「仕方がない」という言葉は言わないであげてください。それを言っても不安な気持ちは取り除けないですし、言われた子どもは自分が否定されたような気持ちになりま

子どもの不安や葛藤にはできれば共感を示してあげてください。

難しければ共感するふりでもいいんです。

これはカウンセリングの手法ですが、ある程度の「オウム返し」は効くと思います。「宿題、できなかったんだよ」「そう、宿題ができなかったのね」「だから、学校に行きたくなくて」「学校、行きたくないんだね」と、子どもの話をそのまま繰り返す。

その人に寄り添って話を聞く、「傾聴」が大事です。でも、聞いているとイライラすることもあるでしょう。難しいです。

もちろん、本人がどんな気持ちだったのか、理解しようと思いながら聞くほうがよいとは言われています。しかし、できない場合は「傾聴役」という芝居を打つと心に決めてください。本心までコントロールしなくてもいいんです。素晴らしく理解のある親、子どもの苦しみを丸ごと受け止める親になんて、誰もなれないんですから。


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