保育所の多機能化 少子化への展





山陽新聞デジタル
------------------------------------------------------------------------------------------------

 子どもが減り続ける人口減社会で保育所はどんな役割を担っていくのか。近い将来、定員割れで存続困難な施設が増える懸念があるとして、今後の保育所の在り方を議論していた厚生労働省の有識者検討会が報告書をまとめた。

 国の保育所政策はここ20年ほど保育所に入りたくても入れない待機児童の解消を主軸としてきた。働く女性の増加を受け自治体などは急ピッチで受け皿整備を進めるが、実現への道のりはなお遠い。

 だが一方で少子高齢化が想定を超える速度で進む。厚労省は今年、2025年に保育所の利用児童がピークに達するとの初の試算を示した。新型コロナウイルス禍の影響もあり、首都圏でも利用者減により運営が危ぶまれる施設が出ているという。

 待機児童ゼロへの取り組みを続けつつ、保育所過剰時代に向けた政策へかじを切ることが必要なのは確かだろう。過剰に転じた地域で今ある施設をどう整理・縮小し、質の良い保育を維持していくかが課題になる。

 報告書が提言するのは「多機能化」である。少子化や核家族化によって地方であっても子育て家庭の孤立が進んでいる現状を踏まえ、そうした家庭を継続して支える「かかりつけ相談機関」の役割を担えるよう国や自治体に改修費などの支援を促した。

 具体的には、保育所に通っていない3歳未満児が週1、2回利用できるようにする一時預かり事業の拡大や、空きスペースの子ども食堂への転用を挙げる。医療的ケア児や外国籍の児童らの受け入れに備えて医療職や通訳との連携強化も求めた。

 実際に子育て支援団体などの意見を反映しており、方向性は納得できるものだ。ただ現状では保育の担い手不足は深刻で、人口減が進む地域ではより一層人材確保が難しい。保育所を地域のインフラと位置付け、現場のノウハウを生かす狙いであれば、まずは保育士の処遇改善の着実な実施が欠かせまい。

 「保育の質」の確保を巡っては、子どもへわいせつ行為をした保育士の復帰要件の厳格化も盛り込まれた。登録を取り消された保育士が刑期を終え、再登録できるまでの期間を現在の2年から10年に延ばす。都道府県が審査会などで復帰の可否を判断する仕組みも導入する。

 厚労省は来年の通常国会に児童福祉法改正案を提出予定だ。わいせつ行為防止策については政府が創設を目指す「こども庁」も担うとされる。丁寧な議論で実効性を高めてもらいたい。

 保育のニーズは多様化し、地域差も大きい。少子化が先行する地方では幼稚園などとの統廃合が進み、既に提言にあるような子育て支援事業の拠点となっている保育所も少なくない。地域でどのように次世代を育んでいくのか、国や自治体がしっかりと展望を示すことが求められる。


------------------------------------------------------------------------------------------------

コメント