保活の常識に変化「保育園入りやすくなった」真相 「入れればどこでも」からゆとりを持てるように



東洋経済オンライン様
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「保活」が最も厳しかった東京都で待機児童数300人――。

7月27日に東京都が発表した2022年4月1日現在の都内の待機児童数は300人で、昨年よりも669人減となりました。5年前には待機児童数8586人でしたので、急速に改善したことになります。

ここ2年ほどで認可保育園等(認可保育園、認定こども園、小規模保育、家庭的保育など。以下「認可保育園等」)に入りやすくなったことは確かです。

といっても、「待機児童数ゼロ」と発表している自治体でも、認可保育園等に入園申請した子ども全員が認可保育園等に入れているわけではありません。「入れなかった子ども」も、国の定義した条件に合致する場合は、自治体の集計時に待機児童数から除外してもよいことになっているからです。

例えば、認可に落ちた子どもが助成を受ける認可外を利用している場合、登園が可能とされる範囲内の認可・認可外(助成施設)を紹介されて辞退した場合、保護者が求職中であるがハローワークなどでの求職活動が行えていない場合などは待機児童にカウントされません。待機児童数のカウント方法については、こちらの記事(「日本死ね」から5年、待機児童問題は解決したのか)も参考にしてください。

申し込んだ児童の何%が入れているのか

では、認可保育園等に申し込んだ児童の何%が本当に認可保育園等に入れているのでしょうか。

これを調べるためには、新規に入園申請をした児童数と、入園が決定した児童数を調べなければなりません(国や自治体が発表する申込者数・利用児童数は進級児を含んだもの)。

私が顧問を務める保護者グループ「保育園を考える親の会」では毎年、都市部100市区について、これらの数値を調査しています(「100都市保育力充実度チェック」)。認可保育園等への新規の入園申請者のうち、認可保育園等に入園できた児童の割合を求めると(入園決定率)、2021年4月1日現在の100市区の平均は80.8%でした。

2022年の数字はまだ調査中で、これを1〜2%上回ると予測されますが、いずれにしても認可の保育施設への新規入園希望者のうち2割近くが認可に入れていないことになります。特に都市部の1歳児クラスについては、4月に希望する認可保育園等に入れなかったケースはまだ多いのではないかと考えられます。

希望の園・クラスが満員で選考に落ちてしまうケースが残る一方で、利用希望者がクラスの定員に満たず、空きが出てしまっている園・クラスも発生しています。

新聞報道にもあったように、昨年度あたりから、認可の保育施設の特に0歳児クラスに空きが目立つようになってきました。コロナ禍の影響で、利用控えが発生しているという観測もあります。

これまで認可保育園等への入園は、4月1日入園が最も募集が多く入りやすいけれども4月でほぼ枠が埋まってしまい、5月以降の年度途中入園は厳しいと言われてきました。しかし今、そういった「保活」の常識も変化しつつあります。

実際の状況を確認する方法

実際の状況は、各自治体がホームページで保育施設の「募集人数」「空き状況」として公表している数字が参考になります。

ここでは、過去のデータも開示している世田谷区を例にとって数字を追ってみます。4月入園の結果が出た直後の5月1日と、3カ月後の8月1日で、3歳未満児の欠員(空き)を合計すると次のようになっていました。

■年度前半の空き状況の変化(世田谷区、2022年度、区内287施設*の合計)

(注)*認可保育園(254)、認定こども園(6)、小規模保育(22)、家庭的保育(4)、事業所内保育(1)
(出所)世田谷区ホームページの公表数値から筆者作成

5月1日の時点では、0歳児クラスに1名以上の空きがあった施設が全体の25.1%ありました。これらの施設では0歳児の4月1日入園は全入だったということです。1歳児クラスではこれが8.7%しかありませんでした。2歳児クラスは14.6%でした。

3カ月後の8月1日になると、0歳児のクラスに空きがある施設は大幅に減少しています。1歳児クラスはもともと少なかったので0歳児クラスほどには減っていません。定員数で見ると、この3カ月間で0歳児クラスは115人埋まっていて、1歳児クラスも19人埋まっています。2歳児クラスは動きが小さいことがわかります。

このような空き状況は地域によってかなり違っています。

8月1日時点で比べてみると、たとえば足立区では、全185施設(家庭的保育を除く)で1名以上の空きがある施設の割合は0歳児16.2%、1歳児16.8%、2歳児32.4%と各年齢とも世田谷区よりもだいぶ多くなっています。足立区では、このほかに家庭的保育(保育ママ)も116カ所開設されていて多くに空きが見られます。

同様の数字を杉並区の全222施設(家庭的保育を除く)について見ると0歳児11.3%、1歳児20.7%、2歳児36.0%と、0歳児よりも1歳児での空きのほうかかなり多くなっています。受け入れが1歳児からの園が比較的多いことも影響しているかもしれません。

杉並区では、このほかに区が設ける0〜2歳児対象の保育室(認可外)があって、今年度まで0〜2歳児を多く受け入れてきましたが、その多くが今年度〜来年度で閉室することになっています。

3区とも、区内にも地域差があって、4月直後から「ほぼ空きがない」地域もあれば、空きのある施設が固まっている地域もあります。

つまり、自分が住んでいる地域の状況が非常に重要になります。今年の5月1日時点での空き状況を調べると、園・クラスごとの4月入園の状況(全入だったか待機が出たか)がわかるのですが、過去のデータを開示していない自治体が多いようです。入園担当窓口に自分の地域に絞って問い合わせれば教えてもらえるかもしれません。

「入りたい園」で希望を出す

「人気園を希望すると落ちる確率が高くなるのでは?」と心配する人もいますが、だんだんに入りやすくなっている現状をふまえ、「質重視」で園を選んで希望を出すのがよいと思います。

入園時期も、空きの埋まり具合によっては年度途中に予定するのもありだと思います。早生まれの子どもを低月齢で預けることに抵抗を感じている方も多いと思いますが、1カ月でも2カ月でも遅らせることができれば、ずいぶん違うでしょう。

ただし、欠員状況表は月が進むにつれ「0行進」が増えていきますので、タイミングが難しいかもしれません。定員変更などがないか、園や自治体にも確認することも必要になります。

これまで厳しい入園事情のもとで「入れればどこでも」と考えてしまう傾向がありましたが、もう少しゆとりをもって園選びができるようになってきています。

3歳未満児対象の小規模保育や家庭的保育を選ぶ場合も、途中転園あるいは卒園時に希望の保育園に移れるチャンスはこれまでよりも大きくなっているはずです。

できるだけ中身の人(施設長や保育者)を重視して、信頼できる施設を選んでもらいたいと思います。拙著『後悔しない保育園・こども園の選び方』を参考になります。

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