【沖縄知事選】子宝の島 保育士不足…育児充実 具体策は


讀賣新聞オンライン
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沖縄県知事選(9月11日投開票)で米軍基地問題や経済振興が争点となる中、各候補がこぞって重要施策に掲げるのが子育て支援だ。沖縄県は出生率が全国1位の「子宝の島」である一方、待機児童率は全国ワースト。保育環境の悪さは、深刻な「子どもの貧困」の要因にもなっており、保育の現場からは実効性ある施策を求める声が高まっている。(島田愛美)

コロナで減収

 23日夜、那覇市の認可保育園「玉の子保育園」では、0~4歳児8人がミルクや手作りの幼児食を口にしていた。食後は入浴を済ませて就寝。最後の園児が母親に抱えられて帰る頃には日付が変わっていた。

 午後9時頃、2歳の一人息子を迎えに来たのは38歳のシングルマザー。昼は文化施設のパート、夜は非正規の事務職として働く。「夜間保育のおかげで安心して働ける」と話すが、最近は新型コロナウイルスの感染者が出るたびに休園となり、仕事を休まざるを得なかった。欠勤中は無収入。第7波が猛威をふるった7月の収入は約6万円だった。「今の生活が精いっぱいで、この子の将来が見通せない」と不安を口にする。

 同園のルーツは、沖縄が本土復帰した1972年に理事長の高良桂子さん(83)が始めた保育園だ。当時から働く女性が多く、負担を軽くしたいと開園した。

 日が暮れても迎えが来ない子がいるのは日常茶飯事で、高良さんが自宅に連れ帰り、面倒を見ることも多かった。97年に県内初の夜間保育を始めたが、保育士不足で定員上限まで預かれず、夜間預かる子は定員の半数の10人にとどまる。

待機児童率最悪

 沖縄県は1人の女性が生涯に産む子どもの推計値「合計特殊出生率」(2020年)が1・83で全国1位。人口1000人あたりの離婚率(同)も2・36とトップで、子育ての負担が母親にのしかかる。一方で、待機児童率(同)はワーストの2・19%と全国平均の約5倍で、保育環境の厳しさが拍車をかけている。

 県によると、県内の認可保育園では今年4月現在、計406人の保育士が不足しており、全体の約2割の187施設で定員割れが発生した。深刻なのが0~2歳児をみる保育士の不足だ。国の配置基準では3歳児なら20人に保育士1人だが、1、2歳児は6人に1人、0歳児だと3人に1人となる。2020年の待機児童率でも2歳以下は3・99%で、全体を押し上げていた。

無償化訴え

 選挙戦で各候補が声高に訴えるのは、子どもに関する費用の無償化だ。現職の 玉城たまき デニー候補は給食費、前宜野湾市長の 佐喜真淳さきまあつし 候補は保育料と給食費、子ども医療費、元郵政改革相の 下地幹郎しもじみきお 候補は大学までの授業料も対象に加えた。

 一方で、肝心の保育環境の整備については、どの候補も保育士の確保や処遇改善を掲げるものの、必要性の高い2歳以下の保育や夜間保育の充実など、課題解決につながる具体的な施策は聞こえてこない。

 「地域のつながりが希薄になり、孤立や生活苦に悩む母親たちは以前よりも多い」と感じているという高良さん。「深刻な現場の実情を知った上で、子育てに悩む保護者の救済につながる施策を」と願う。

「貧困の連鎖断つ施策を」

 琉球大の山本章子准教授(沖縄現代史)によると、27年間の米国統治で児童福祉法の施行が遅れた沖縄には認可外保育園が多く、県による年1回の立ち入り調査も追いついていないという。「幼い子どもへの配慮が行き届いた保育ができるよう、保育士の確保に加えて質の向上に関する議論も深めてほしい」と話す。

 一方、沖縄は母子世帯の割合が全国平均の約2倍で、生活苦に陥る世帯の多さが「子どもの貧困」の背景にあるという。「給食費の無償化など一律の『バラマキ』だけでなく、母親となる人の経済力向上につながる施策が重要だ。女性が希望を抱ける社会をつくることが貧困の連鎖を断つことにつながる」と指摘する。


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