同じ子どもなのになぜ? 阿南市「保育と療育は別のもの」 分けられる障害児支援 【あなたとともに~こちら特報班】


徳島新聞様


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 国の子育て支援として、2019年10月に始まった「幼児教育・保育の無償化」。3~5歳児の保育料を無償にする制度で、障害児施設の利用料などを無償にする「就学前の障害児の発達支援の無償化」も同時にスタートした。徳島県内では阿南、板野、神山の3市町が独自施策で保育料無償化の対象を0~2歳児にも広げたが、発達支援の対象については拡大していない。「同じ子どもなのに支援の対象からはじかれてしまうのは寂しい」。徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」に、阿南市で子育て中の30代女性からそんな声が寄せられた。自治体などを取材した。

「保育料の無償化」 障害児は含まれない?

 女性の3歳未満の子どもには発達の遅れがあり、阿南市外の療育施設に通っている。乳幼児健診で指摘され、病院では障害の疑いがあると診断された。子どもの言動から「将来的に世間並みの賃金を稼ぐのは難い」と感じているという。

 阿南市では表原立磨市長が就任時の公約に保育料の無償化を掲げ、先月からは0歳児まで対象を拡大した。しかし、障害児が発達支援サービスを無償で受けられるのは3歳から。「なぜ障害児は自己負担がかかるの。同じ子どもなのに制度からはじかれてしまうのか」

 内閣府のホームページには、保育と発達支援の無償化が並んで掲げられている。ネットで情報を集めたところ、他県では両方とも無償化している自治体もあると知った。「阿南市が忘れているのか、あえて障害児の支援を置き去りにしいるのか」。女性はやるせない気持ちを打ち明けた。

 

阿南市「保育と療育は別のもの」 板野町、神山町も保育料のみ負担

 阿南市によると、発達支援では無償化の対象拡大を検討していないという。地域共生推進課は「保育と療育は別のものの支援と捉えている。国や県内の自治体の動向を見ながら対応したい」とした。

 16年10月から全ての子どもの保育料を無償にしている板野町は「少子化対策の一環で子どもの数を増やすのに必死だった。障害児支援については議論できていない」と説明。国の子育て支援開始に合わせて0~2歳児の保育料を無償化した神山町では、昨年まで障害児施設の利用がないという。両町とも、発達支援の無償化対象を広げるかどうかは今後検討する。

 3市町以外の県内21市町村では、第2子に限っては保育料無償の対象年齢を広げるなど、何らかの措置を取ったケースもある。ただ、保育と発達支援の両方で無償化の対象を拡大した自治体は県内にはない。

 

 「保育も療育も子どもを育てることに変わりない」

 一方、県外にはある。19年9月から2歳児も対象とした大阪府八尾市は、同4月に初当選した大松桂右市長が選挙公約で保育無償化の拡充を掲げていた。「国の制度では一緒に支援しているので、同じようにしないのはおかしい」と担当者。定住促進策の一環で、0~2歳児も無償化した岩手県宮古市は「保育も療育も子どもを育てることには変わりないので、同様に支援している」とした。

 

 幼児教育・保育無償化は「全ての子育て世帯への支援」

 自治体によって対応がまちまちな子育て支援。厚生労働省に制度の趣旨を確認すると、全ての子育て世帯に対する支援であり、発達支援の無償化も幼児教育・保育の無償化の一つだという。障害福祉課は「障害のある子もない子も子育てが必要なのは同じ。片方だけを支援しないのは当初の趣旨から外れてしまう」と指摘した。

 障害児支援に詳しい四国大の前田宏治教授(特別支援教育)は「子どもは社会で育てるものだという考えを持たないと、支援の対象から外れやすくなる。障害があろうとなかろうと、伸び伸びと遊べる環境や多様な学びの場を提供することが大事」と話している。

就学前の障害児の発達支援の無償化
3~5歳児の発達支援サービスの利用料を無償とする国の子育て支援制度。2019年10月に始まった。日常生活の基本的な動作指導などを行う「児童発達支援」、保育所などの集団生活に適応するための支援を行う「保育所等訪問支援」、施設に入所している児童に指導などを行う「福祉型障害児入所施設」などの利用が支援の対象。

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