災害弱者を「想像」で守れ 広がる「ドタバタ・イベント法」とは

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「想像できないことはほとんど起こりません」。そう言い切るのは、危機管理学が専門の清水宣明・愛知県立大教授。災害弱者を守ろうと清水教授が考案した「ドタバタ・イベント法」が各地の保育園や高齢者施設に広がり始めている。  ある保育園の保育士たちが大地震を想定し、実際の災害発生時に「ドタバタ」するだろうことをカードに書き出した。  「子どもがトイレに長時間取り残され脱水状態に」  「散歩中で園に帰れない」  「数人の子がパニックになり保育士が足りない」  「コット(昼寝用の簡易ベッド)が倒れて足場がない」  「大勢がケガをして対応する順序がわからない」  「乳児にミルクを飲ませたいがお湯がない」  事前に3カ月かけてカードに書きためた「ドタバタ・イベント」は50枚以上。これらを横軸が「発災時」「混乱期」「落ち着き時」、縦軸が「園児」「職員」「もの」と9分割した分類表(マトリックス)に貼り付けた。  清水教授が考案した「ドタバタ・イベント法」は、ドタバタするだろう出来事を、想像力を駆使して抽出し、それらを、事前に解決できる▽その場で対処▽どうしようもない――の三つに分類して可視化し、具体的な備えにつなげる。特に災害時の動きが読めない幼児やお年寄りなど災害弱者の対策に有効で、「想像し尽くす」ことが重要という。  愛知県春日井市は29の公立保育園で導入を決め、うち貴船保育園では10月、保育士たちによる「対策会議」が開かれ、冒頭で紹介したカードが次々に分類表に貼り付けられていった。  「この表が皆さんの園の被災の姿なんです」と清水教授が呼びかける。「皆さんが想像できることは起こりうること。想像できないことはめったに起こりません。災害対策が進まないのは具体的でないから。被災の姿を可視化すれば対処できます」と話すと、保育士たちはうなずいた。  そして「アクションカード」の作成に取りかかった。混乱した状況下でも手順を着実に実行できるよう、具体的で明確な指示を書いたカードだ。防水加工して目につく場所に貼ったり、持ち歩いたりする。  「散歩中で園に帰れない」のカードについてのアクションは①まず、落ち着け②安全な場所に子どもを集めろ③人数、負傷を確認④周囲の状況を確認⑤外部に連絡しろ――の順となった。  保育士たちは想像の限りを尽くしてにぎやかに議論し、時折笑い声も上がった。山本沙織さん(42)は「押さえるポイントが見えてきたことで、深く考えすぎず、落ち着いて対応することができそう」と話した。  清水教授が考案したオーダーメードの防災対策。清水教授によれば、県内の保育園や高齢者施設など約40施設で「ドタバタ法」の対策が進み、県外からも指導の依頼が相次いでいるという。  清水教授は「保育園にはさまざまな生活環境、成長度合いの子どもがおり、想定通りにはいかない。災害弱者の全ての特徴を持っている。最も弱い人を基準に、頑張らせすぎない対策にすることが重要だ」と指摘している。


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