放課後デイ、子供の安全確保に課題…国の基準には具体性なし


讀賣新聞オンライン様


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 制度開始から10年あまりで、死亡8件を含め少なくとも約4100件の事故が確認された放課後等デイサービス(放課後デイ)。障害を抱える子どもの居場所として家族のニーズも高いが、より安心して利用するには課題が多い。(相良悠奨、河津佑哉)

 「利用者の特性に応じた対応を職員に徹底できていなかった」。2021年に知的障害がある小学生の男児が亡くなった東日本の放課後デイの運営法人理事長は、こう悔いる。

 当時は男児ら6人を職員ら6人が支援していたが、男児をみていた職員が別の子どもに気を取られている間に男児が部屋の外へ。数日後、近くの川で亡くなっているのが見つかった。自ら玄関の鍵のつまみを回し、出て行ったとみられる。

 職員らは男児が衝動的に行動する特性を把握していた。ただ、4人が経験の浅い学生アルバイトらで、男児が部屋を出る姿を見た学生は「トイレに行くんだろう」と見過ごした。国の人員配置基準(利用者10人に対して従業者2人以上など)を満たし、支援に慣れた保育士もおり、理事長は「安全への過信があった」と省みる。自治体からは運営を改善するよう指導を受けた。

 現在は番号入力式の鍵を導入し、事故につながりかけた事案を検証する研修会などを開く。理事長は「安全でより良いサービスを提供することが私たちにできる唯一の償いです」と話す。

 放課後デイは12年4月の制度開始以来、活動内容やスタッフの質を問われてきた。国は15年にガイドラインを作成したが、安全に関する項目では「環境の安全性を毎日点検し、必要な補修などで危険を排除する」などの表記にとどまる。事故の報告先も、都道府県など指導権限のある自治体に限られている。

 福島学院大の内山登紀夫教授(児童精神医学)は「子どもを守るには障害特性への理解や配慮が欠かせず、ソフト、ハードの両面での安全な環境設定が重要だが、今の基準は曖昧で不十分。専門性のある人材の配置や研修内容の明確化、事故事例の共有など、国の主導が必要だ」と指摘する。

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