児童養護施設の生徒などの受験費用を支援へ 1人当たり20万円


NHK NEWS WEB様


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経済的に困難な状況にある児童養護施設の生徒などを支援しようと、日本学生支援機構は入学前の受験にかかる費用を支援する制度を新たに設けることを決めました。

児童養護施設や里親などのもとで育った生徒にとって受験料や交通費などで30万円前後かかるとされる受験費用の確保が大学進学の壁になっていると指摘されてきました。

このため全国の学生に奨学金などの支援を行っている日本学生支援機構は、こうした生徒に対して受験にかかる費用を支援する制度を新たに設けることを決めました。

支援額は1人当たり20万円で、高校卒業後に就職せず大学や専門学校への進学を希望していることが条件で、来年春に卒業するか卒業後2年以内の生徒を対象にことし5月から受け付けを始めます。

経済的に困難な生徒への修学支援をめぐっては国の制度で給付型の奨学金や授業料の免除などが行われていますが、入学前の受験料の支援が全国規模で行われるのは初めてです。

国の調査では2020年の時点で大学や専門学校への現役進学率は74%ですが、児童養護施設の生徒は33%にとどまっています。

日本学生支援機構は「児童養護施設の生徒は学年があがるにつれて、進学希望者が少なくなる。寄付金を元手に年間2000人程度支援できるので、希望する生徒全員が進学を諦めることがないよう支援を続けたい」と話しています。

児童養護施設の生徒の現役進学率は33%

大学や専門学校などへの現役の進学率について文部科学省と厚生労働省が2020年に行った調査では、▽すべての世帯で74.3%、▽児童養護施設の生徒は33%となっています。

また、厚生労働省が2021年に行った進学率の調査では▽母子世帯では66.5%、▽父子世帯では57.9%となっています。
受験費用はどの程度かかる?

大学などを受験するにはどの程度の費用がかかるのか、昨年度、日本政策金融公庫が調査した結果、受験料のほか、交通費や宿泊費などを合わせると▽国公立大学で27万7000円、▽私立大学の文系で31万3000円、▽私立大学の理系で32万2000円と試算されています。

このうち受験料だけでみると▽大学入学共通テストが3教科の受験で1万8000円、▽国公立大学の2次試験が一校当たり平均で2万円、▽私立大学は一校当たり平均で3万5000円です。

厚生労働省が2021年までに行った調査で児童養護施設で育った生徒に退所する前の不安や心配なことについて複数回答で聞いたところ、▽「生活費や学費のこと」が最も多く47.9%、▽「仕事のこと」が39.9%、▽「将来のこと」が34.5%となっています。

施設を退所したあとも「生活費や学費のこと」が34.3%と最も多く、進学の前後から一貫して金銭面の不安が際立つ結果となっています。

また、2018年に厚生労働省が行った調査で大学への進学希望について聞いたところ▽中学3年生時点で37.6%が「希望する」と回答していますが、▽高校3年生や定時制の4年目の生徒は、27.3%と進学を希望する生徒は10ポイントほど低くなっています。

NPO代表「子どもたちがより高い目標にもチャレンジできる」

児童養護施設出身の若者の調査や支援を行っているNPO「ブリッジフォースマイル」の代表、林恵子さんは、児童養護施設で育った生徒の進学について「親を頼れず、施設も公費で運営されているため自由にお金を拠出することが難しい。子どもたちは経済的な不安を抱えながらアルバイト代から受験料を出さなければならず、受験する学校を絞ったり進学を諦めたりすることもあった」と指摘します。

そして、「今回の支援は子どもたちを大きく後押しすることになり、より高い目標にもチャレンジできるようになると思う。施設の職員や里親にとってもお金の心配がなくなることで安心して子どもたちの背中を押せる環境が整う。小中学校の段階から『進学できるんだ』ということを聞かされていると自然と進学が視野に入ってくるので、子どもたちにきちんと情報を伝え続けていくことが重要だ」と話しています。

その上で「施設退所後の支援が拡充したのはこの数年で、それ以前に支援を受けられなかった子どもたちの中には十分なサポートがないままキャリアをきちんと形成する機会がなく今も苦しい状態の人もいる。こうした取り残された人たちにも目が向けられるべきではないか」と話していました。
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