保育士の配置基準を76年ぶり改定へ 4~5歳は30人から25人に 2024年度から、実効性には課題も




東京新聞web
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「こども未来戦略」案に明記

 政府は11日、「次元の異なる少子化対策」の具体的政策や財源を盛り込んだ「こども未来戦略」案を公表した。来年度から保育士の配置基準の一部を76年ぶりに見直すことが明記された。3月末に方針を発表した際には、「保育現場に混乱が生じる可能性がある」(小倉将信前こども政策担当相)などとして、配置基準の改定を否定していた。保育現場からの切実な声で見直しに至った格好だが、課題も多い。


「基準の改善」から一転 3歳児も改定へ 

 来年度から基準を改定すると明記したのは、保育士1人がみる4~5歳児の数で、現行の30人から25人に手厚くする。こども家庭庁によると、同時に3歳児の数も現行の20人から15人に改定するという。認可保育所では、国の配置基準によって、保育士1人がみる子どもの人数が年齢ごとに決まり、受け持つ子どもの数が多いため現場の負担が大きいことが課題だった。

 ただ、政府はこれまで基準の見直しには後ろ向きで「(基準を満たす)保育士等が確保できない施設では保育の提供に支障が生じる」などと主張。保育士を増やす保育所を資金的に補助する公定価格の加算措置による「基準の改善」を打ち出していた。

 今回、政府は方針を転換し、加算と合わせ基準自体の改定が実現する。だが急な保育士の確保は難しいとの配慮で「当分の間は従前の基準により運営することも妨げない」との経過措置を付記した。

「加算では格差が広がる」現場の声届く 

 こども家庭庁は、6月にこども未来戦略方針を発表後、保育事業者団体や専門家を交えた「子ども・子育て支援等分科会」での議論を通じ、具体案を固めてきた。8月の第1回会合から、加算措置でなく、基準そのものの改正を求める声が相次いでいた。

というのも、加算では事業者や自治体の判断で保育士を増やさない恐れがあるためだ。今月6日の第4回会合でも「全国保育協議会」(東京)の代表者が、保育所や地域で「格差が広がる可能性がある」と指摘していた。

 これら現場の声に加え、国会でも野党から加算では不十分と批判が出ていた。こども家庭庁の本後健保育政策課長は、今回のこども未来戦略案に「配置基準の改正」と明記した理由を「分科会などでの現場の意見も受け、基準の改善をより明確にした」と説明した。

保育士は歓迎「ようやく山が動いた」

 「ようやく山が一つ、動いた」。愛知県の保育士らによる「子どもたちにもう1人保育士を!」運動の呼びかけ人の平松知子さんはそう喜ぶ。運動を始めたのは2021年末。街頭で配置基準問題を訴えても、関心を持たない人がほとんどだった。だが各地で保育事故や不適切保育が相次ぎ、配置基準を改善すべきだとの意識が広がったと感じる。

 もっとも分科会では「4~5歳児15人に保育士1人」とさらなる改善を求める意見もあった。平松さんも「国はこれで十分と思わず、配置基準改善を進めてほしい」と望む。

だが…期限が未定なら骨抜きの懸念も 

 一方、新基準が骨抜きになる懸念もある。旧基準でも構わない「経過措置」の期限は未定だからだ。

 新基準でも保育士を増やした分の財政的な手当てが自治体により不十分な可能性もあり、約60の認可施設を展開する事業者代表は「利益追求型の事業者は、今後も最少人数しか配置しないだろう。期限を決めないと、実効性が乏しいのでは」と指摘した。

保育士の配置基準

 保育士1人で受け持てる園児数で、1948年に国が定めた。1998年に0歳児「6人」を「3人」に改善してから変わっていない。現在は1・2歳児6人、3歳児20人、4・5歳児30人となっている。保育所に支給される人件費に、この基準が反映される。

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