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<主張>最低賃金50円上げ 継続に向けた環境整備を




産経新聞
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今年度の最低賃金引き上げを巡る議論が決着した。

厚生労働省の中央最低賃金審議会は、現在に比べて全国平均で1時間当たり50円引き上げ、1054円を目安とすると決めた。

引き上げ額は昨年度の43円を上回り、過去最大である。引き上げ率は4・98%で、時給もこれまでの最高額となる。

連合によると、今年の春闘の平均賃上げ率は5・10%と、33年ぶりに5%台を達成した。物価変動を加味した実質賃金のマイナスが続く中で、パートやアルバイトの時給に影響する最低賃金についても春闘に近い引き上げ率で決着したことは評価できる。

ただ、時給が最高額になったといっても、この水準ではフルタイムで働いても年収は220万円ほどだ。岸田文雄首相は昨年8月に「2030年代半ばまでに全国平均が1500円になることを目指す」と表明している。来年度以降も着実に引き上げを進めることが重要だ。

問題は、ここ数年の最低賃金の引き上げによって、中小・零細企業の負担が重くなっていることだ。

今年度の協議でも、経営者側の危機感が強く表れた。労働者側は67円の引き上げを主張したのに対し、経営者側は一定の引き上げに理解を示しながらも、人件費が急激に上がれば中小・零細企業の経営面への打撃は避けられないと主張し、協議は難航した。

中小・零細企業が賃上げ原資を確保できるよう、環境整備を急ぐ必要がある。

人手不足は深刻で、都市部などのアルバイトの時給は最低賃金の目安を上回る賃金水準が目立つ。中小・零細企業が人材を確保するには、生産性を向上するなどして賃上げ原資を生み出す努力が欠かせない。

政府には、そのための支援策に加え、原材料費や労務費の上昇分を取引価格に適正に転嫁できるように、大手企業との取引状況の監視をさらに強めることが求められよう。

最低賃金は今後、今回の目安を基に都道府県の審議会が個別に決めることになる。都市部と地方の格差は続いており、その是正も急務だ。最低賃金の引き上げを日本経済全体の底上げにつなげ、経済の好循環を実現する必要がある。

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