NHK NEWS WEB様
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保育所の待機児童の人数はことし4月時点で全国でおよそ2500人で、過去最少となり解消に向かう一方で、国が課題としているのが「保育の質」の向上です。こども家庭庁は保育士への研修や新たなモデルの開発に取り組むとしています。
こども家庭庁によりますと、ことし4月時点の保育所などの待機児童は全国で2567人と過去最少になり、その要因として、待機児童数がピークだった平成29年と比べて、保育所などの利用定員が全国でおよそ38万人分増加したことなどをあげています。
量的な拡大などによって待機児童問題が解消に向かう一方で、各地で不適切な保育や保育士の大量退職などが相次いでいることから、国は待機児童問題に続く課題として、「保育の質」の向上をあげています。
このため、こども家庭庁は保育士の処遇改善や人材確保などとともに、自治体や養成機関などが行う保育士への研修の実施の支援や、経験豊富な「保育指導職」を配置したり、職場の風通しを良くするために法人を超えて職員が交流したりするなど、質向上にむけた自治体の取り組みを支援し、全国に広げるためのモデルを新たに開発するとしています。
自治体も独自の取り組み
質向上に向けて、自治体も独自の取り組みを始めています。
埼玉県戸田市はおととし以降、待機児童ゼロが続いてはいますが、去年、複数の保育所から保育士が不足しているため、新規で受け入れる子どもの人数を減らしたいという申し出が相次いだといいます。
また一部の保育所では、保育士の退職や休職によって年度途中で受け入れ人数を減らさざるをえない状況にもなったといいます。
市が去年10月に私立の50の保育所を対象に行った調査では、全体の64%にあたる32の保育所が「保育士が不足している」と回答し、「保育士不足によって質の高い保育の維持が難しい」「疲弊してミスが増えたり、保育にも余裕がなくなる」などの声が寄せられたということです。
そのため市では、市内の私立の保育所で働く保育士の処遇の改善のため、これまでも支給してきた独自の手当てを年間20万円から年間40万円余りに増額しました。
さらに職場環境の改善に向けて、現場で働く保育士の悩みや相談に対応するため、園長経験者や看護師などによるチームが、保育所を定期的に巡回してサポートする取り組みも行っています。
巡回支援は、保育士の悩みに寄り添うほか、風通しのよい職場環境作りにつなげたいとしています。
現場の保育士は、「私たちにも目を向けてもらえているという感覚があるので、励みになる。保育士の人手が増えることで余裕も生まれて質の向上にもつながると思う」と話していました。
さらに、戸田市は9月にも市内のすべての保育施設や行政、有識者などによる新たなプロジェクトを立ち上げ、今後2年間でさらなる労働環境の改善や、質の向上に向けた事業の立案などを進めるとしています。
戸田市保育幼稚園課の福田忠史課長は、「もともと保育士の確保は難しいところがあったが、さらに深刻化し、今までとは違う危機感を感じている。保育士への経済的な支援で人材を確保すると同時に、保護者が安心して預けられ、保育士も安心して働ける環境作りに、自治体としてできることに取り組んでいく」と話していました。
専門家「すべての子どもが質の高い保育受ける権利」
保育の問題に詳しい日本総合研究所の池本美香上席主任研究員は、「これまで待機児童が保育の一番の問題としてクローズアップされていて、“保育は親が働くために必要なもの”という捉え方で議論されてきたが、“すべての子どもが質の高い保育を受ける権利がある”という考え方に見直す時期にきていると思う。配置基準や保育者の働き方、大量離職するような状況をどう変えていくのか、議論を急ぐ必要がある」と指摘しています。
そのうえで、現場でも保育の質の向上に向けた取り組みが進められていることについて、「自治体がどんどん取り組みを進めていくことはすばらしいが、財源がある自治体だけでなく、どこに住んでいても確実に質の高い保育を受けられるよう、国は責任をもって格差を縮めていかなければいけない。自治体の取り組みや保育者の声などを集めて現場の実態と課題をきちんと受け止めたうえで、制度づくりを進めていくことが重要」と話していました。
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